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金子文子 朝鮮での少女時代[2019年04月13日(Sat)]

DSCN0046-A.jpg
ケヤキ。高さ、枝ぶり申し分ない。若葉を広げ始めた。

*******

金子文子『何が私をこうさせたか』より朝鮮での少女時代

9歳になった文子が祖母に引き取られて朝鮮に渡ったのは韓国併合から2年後、1912年の秋である。
*1万円札の肖像として話題の渋沢栄一の肖像が刷られた第一銀行券が出たのはそれより早く1902年。正式な紙幣として韓国に承認させたのは1905年である。

◆無籍者だった文子は9歳の秋に、祖父の五女として入籍した上で、朝鮮で高利貸をしている岩下家(父の妹の嫁ぎ先)の跡取りにする予定で、祖母とともに半島に渡ったのであった。
だが、期待は裏切られ、女中同然に扱われて、せっかく通えるようになった学校も欠席がちな中、気晴らしは栗拾いに山へ登ることだった。そこで出会う雉子や兎を友とし、眼下の川や駅のある辺りを見下ろす。しかしそこからも仮借無い植民地の現実が目撃された――

頂上には、木というほどの木がなく、黄色い花の女郎花や、紫の枯梗だの萩だのが咲き乱れている。先生が、「あれは山ではない、丘だ」と定義をしたことがあるくらいで、この山は決して高い山ではなかったが、それでも位置がいいので頂上に登ると、芙江(ふこう)が眼の下に見える。
西北に当っては畑や田を隔てて停車場や宿屋ゃその他の建物が列なっている。町の形をなした村だ。中でも一番眼につくのは憲兵隊の建築だ。カーキイ服の憲兵が庭へ鮮人を引き出して、着物を引きはいで裸にしたお尻を鞭でひっばたいている。ひと―つ、ふた―つ、憲兵の店高い声がきこえて来る。打たれる鮮人の泣き声もきこえるような気がする。
 (p.155)


◆祖母に折檻され、空腹を抱えたある日の夕方、共同井戸の側で知り合いの朝鮮人のおかみさんが声をかけてくれた。

私の顔を見ると、
「また、おばあさんい叱られたのですか」と親切に声をかけてくれた。
私は黙って頷いた。
「かわいそうに!」おかみさんはじろじろと私の哀れな姿を同情ある眼で眺めながら一言った。「うちへ遊びに来ませんか、娘もうちにいますから」
私はまた泣きたくなった。悲しくて泣くのではなく、ただ大きな慈悲心に融(と)かされた感激の涙で……。
「ありがとう、行って見ましょう」こう感謝して、私はふらふらとおかみさんの後に従(つ)いて行った。
おかみさんの家は、叔母の家の後ろの崖上にあった。そこからは叔母の家の中がよく見られた。そこで私はまた、叔母の家のものに見つけられるのでないかと、心配し始めた。
「失礼ですが、お昼御飯いただきましたか?」
「いいえ。朝から……」
「まあ、朝っから……」と娘は驚いたように叫んだ。
「まあ、可哀相に!」とおかみさんは再びまたこの言葉を繰り返した。「麦御飯でよければ、おあがりになりませんか。御飯はたくさんありますから……」
さっきからの感情はもう胸の中に押し込んでおくことのできないほど高まった。私は朝鮮にいた永い永い七ヶ年の間を通じて、この時ほど私は人間の愛というものに感動したことはなかった。
私は心の中で感謝した。胃から手の出るほど御飯を頂きたかった。けれど私は祖母たちの眼を恐れた。――鮮人の家などで貰って食うような乞食はうちに置かれない、と怒り出すにきまっている祖母を恐れた。私はそれを辞退した。そして空腹をかかえたまま鮮人の家を出た。が、家に帰る気にはなれなかった。裏の草原をあてどもなくうろついた。
  (p.165)

祖母の叱責を恐れて、ご飯の誘いをすら辞退する!
貧困や虐待の問題がやまない昨今の世情が思い併せられて、このくだりを引いておく。



 
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