そらとみずのひしめき[2019年03月14日(Thu)]
水仙。横浜市泉区・和泉川沿いの遊歩道にて。
和泉川は境川に注ぐ11kmほどの川だが、流れの途中にあえて岩を置いて流れの変化を生むように整備されている。
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争う 吉野弘
静
青空を仰いでごらん。
青が争っている。
あのひしめきが
静かさというもの。
浄
流れる水は
いつも自分を争っている。
それが浄化のダイナミックス。
溜り水の透明は
沈殿物の上澄み、紛(まが)いの清浄。
河をせきとめたダム
その水は澄んで死ぬ。
ダムの安逸から放たれてくる水は
土地を肥やす力がないと
農に携わる人々が歎くそうな。
『北入曽』(青土社、1977年)所収。
小池昌代・編『吉野弘詩集』(岩波文庫、2019年)に拠った。
◆「清・浄」というふたつの文字に息を潜めて見入るなかから生まれた詩。
そら、みずそれ自身のうちに潜む争い・ひしめきが、地上のものを生かしていると気づくまでに、どれほど息を詰め目と耳を澄ましていたことだろう。