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〈mine field〉[2019年02月04日(Mon)]

◆「国と国の戦争が終わったと思ったら、今度は国の中で人と人が戦争だネ」――今年93になる田舎の母の口癖だ。戦時下の青春を生きた世代である。

介護施設の元職員による入所お年寄りへの暴行疑い、千葉県野田市の小学4年女児の死――
ともに、守ってくれるはずの人が敵(かたき)となって危害を加えたこと、異変が周囲の人々にスルーされていたことなど、近年の同様の事件と共通する特徴がある。

事件を取り巻く情況への想像力と、踏みつけられる草の根方に身を屈めて手と体を差し出せるか、我々が試されている。

*******

義足の牛   柴田三吉

 (傷ついた牛がのろのろ犂を引きずっても、男
  はこの、時を反芻するいきものを咎めない。
  一筋の涎が、天と地を絶えることのない恵み
  で結んでいるからだ。)

みちばたに立てられた
標識
草を摘む女の子の横には
玩具のような、足
切り抜かれた新聞の写真に
不思議な光景をみて、私の娘は
そこに写し取られた文字を
辞書で引きはじめる

〈mine field〉
 ――わたしの、野

大地を信じて踏み出した
素足は
(わたし)の重さで、
しずかが午後を発火させたのか
切り口に年輪の鮮やかな
右足と
若木のように伸びる女の子の
もう一方の足

〈danger! mines〉
――わたしたちの、危険

誤訳を重ねたのち
ようやく娘は
野が孕む不穏に気づいた
〈mine〉
の綴りが隠すもうひとつの意味
〈地雷、地雷原〉


娘のなかで育ちはじめた
(わたし)の重さ、が
探りあてたのは
この時代に仕掛けられ
いつの日か
自らの足で踏むかもしれない
危ういもの

けれど娘が大きくなったとき
未知の野に
草を食むいきものは棲むだろうか
ひとの重さを背負って立つ
影絵のような
いきもの
傷ついた牛の輪郭を描きながら
私は、欠けた場所に
一本の線を補った


*詩集『さかさの木』(ジャンクション・ハーベスト、1993年)所収。
日本現代詩文庫『柴田三吉詩集』(土曜美術社出版販売、1996年)に拠った。


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