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怒りは髪を黒くする[2019年02月03日(Sun)]

ケストナー光吉訳どうぶつ会議_0003-A.jpg

ケストナー「動物会議」で、人間どもに腹を立てるライオン・アーロイスの口癖がある。

光吉夏弥・訳(岩波子どもの本)では次のようになっている。

「しようがない人間どもだ!」と、アロイスは、じまんのたてがみをふりたてて、いいました。「わしのたてがみが、こんなに金色じゃなかったら、腹がたって、いっぺんに黒くなるところじゃが……


原著が出てからちょうど50年の1999年に新訳大型絵本として出た池田香代子訳は――

「まったく、人間どもったら! おれさまがここまで金髪(ブロンド)でなかったら、頭にきて、いっぺんにまっ黒になってるよ!


◆「金髪のたてがみが一気に黒くなる」という表現が面白い。
ドイツ語では怒りを表すのに「黒い色に変わる」という慣用表現があるのだろう。

「腹がたって」「頭にきて」という言葉もあるからアロイスが怒っていることは小さな読者にも分かるだろうが、大人に読んでもらった場合など、「たてがみが黒くなるの?」と質問する子も出てくるのではあるまいか?

日本語では恐怖や苦労で「(一晩で)髪がまっ白になる」という表現はあるが、黒い髪が普通であるせいか、「まっ黒に変わる」といった表現はない。

「髪の毛が逆立つ」とか「怒髪天を衝く」という怒りの表現は子どもにとって難しすぎる。
「とさかにくる」という言い方などは色も表現していて近そうだといっても、ライオンが鶏冠にきては迫力にかける。
「むかつく」などの単刀直入な表現は、原作の正義の公憤から遠いだろう。

高橋健二訳では「「黒くなる」という原語の表現にこだわらず「まっかになる」を使っていたように思う。アロイスのこの口癖は、繰り返しのおかしみを誘う。ただ、そのたびに「黒くなる」という訳語が引っかかるようだと物語が滞ると考えて高橋訳は分かりやすい表現に置き換えた、ということだろう。

「腹を立てるとブロンドが真っ黒になることもあるんだ!」とという発見は、若い読者のことばの世界を広げてくれるはずだから、どちらが正しいとか、より適切だとか判定を下すべき問題ではない。

井上ひさし版「どうぶつ会議」では、アロイスの口癖はあっさり削っていた。
原作の結末、メッセンジャーとして動物会議の開催を伝えに地球の反対側を目指したミミズが、南オーストラリアに着いたときにはもう会議は終わっていた、というオチも可笑しいのだが、これも割愛している。何せ、絵本とは言っても、池田訳で80頁あまり、市の図書館にあったドイツ語版ケストナー選集では108頁もあるお話で、映画が一本作れるくらいの物語だから、やむを得ない。
そのドイツ語版から、読み方分からぬままアロイスの台詞を探すと、次のように書いてあった。

,,O diese Menschen! Wenn ich nicht so blond wäre,könnte ich mich auf der Stelle schwarzärgern!’’

◆「schwarz」というのが「黒」らしい。そういえばドナウ川の源になるドイツ南西部「シュワルツワルト」というのが「黒い森」の意味だと聞いたことがある。
ひところ酸性雨で白く立ち枯れた黒い森の傷ましい写真が紹介されていたが、今は回復しただろうか?

黒々した森への再生が実現しているとしたなら、それはアロイス同様、森を痛めつけた人間たちへの自然の側からの怒りの表現でもある、ということだ。

我が白髪頭が一向に黒変しないのは、政治や役人の不法への怒りが未だ未だ足りないということか。


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