ふたつの「星月夜」[2019年01月20日(Sun)]
◆ムンクにも「星月夜」(Starry Night)という題の1枚があった。
ゴッホの有名な「星月夜」よりはやや大きめで縦長の作品。
ムンク「星月夜」(1922-24年)120.5×100.5cm(「ムンク展」図録より)
◆オスロ郊外、エーケリーの自宅からの冬景色だそうだ。
右下に青黒く描かれた右横向きの顔はムンクの頭部と見ることができる、と図録解説は述べる。
その頭部の後方、左斜めに湾曲しながら伸びる人の影のようなものが見える。
その影の足元に当たる部分に柱のようなものが二つ立っている、と気づけば、左の柱のようなものからも影が伸び、右の影よりは短く描かれていることが分かる。
してみると二つの影の足元に曲がった釘のように立っている二つの柱は、足の部分がぐにゃりと曲がった人物であるように見えてくる。
影は中景の相当部分を占める畑か庭に積もった雪の上に伸びている。
とすると、「月」は景色を見ている者の右後方から地上を照らしていることになる。
月の位置がゴッホの「星月夜」との大きな違いである。
ゴッホ「星月夜」(1889年) 73.7×92.1cm
*1993年の「ニューヨーク近代美術館展」図録より
◆ゴッホの「星月夜」では右上に月が皓々と光っている。
月光と星たちを同じ画面に描いているのである。
丘陵、樹木、家々の窓の灯りなどはどちらの絵にも共通だ。
この絵の、教会を中心とする小さな北欧風の村は想像の産物だという(作品を描いたのはサン=レミの精神病院である)。
◆同じ題による二つの作品の間には33~35年の時間が横たわるものの、ずいぶん近いものを見つめていたのではないか。