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《存在の外側に息づいているひかりよ。》[2019年01月12日(Sat)]

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◆湘南台文化センターで「藤沢にゆかりのある音楽家たち」による〈弦楽とオーボエが奏でるイタリアの旅〉を聴く。

マルチッェロのオーボエ協奏曲は、半円を成して並んだ弦楽合奏の中心からオーボエ(吉井瑞穂)が弦と融け合いながら美しく響いた。

他は生で聴くのは初めてのものばかり。

後半の大曲、チャイコフスキーの弦楽六重奏曲《フィレンツェの思い出》は圧巻だった。
ヴァイオリン2、ヴィオラ2、チェロ2の編成で情熱と諧謔、対話とモノローグ、重唱から大合唱までのすべてがあるような音楽。弦六本で大オーケストラの響きを追究したもののように聞こえた。
昨秋急逝された名ヴァイオリニスト・名倉淑子に代わり第一ヴァイオリンを弾いたのは戸田弥生(藤沢市在住)。地上の人のわざと魂によって限りなく天上へと向かう音楽を私たちに届けてくれた。

アンコールにチェロの安田謙一郎とヴァイオリン・惠藤久美子によるデュオで、グリエールの「子守唄」が天国の名倉さんに捧げられた。ともに音楽を奏で、教わり、受け継ぐ人たちによる忘れがたい夕べとなった。
逝きしものが地にのこした新たないのちのかがやきのようなもの。

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誕生   齋藤貢

ひかりは、屈折する。ひかりは、かがみ込むひとの姿をしている。だから、その姿勢で、あなたは、口を開き、肺を開き、胸のなかに。この世の気配を吸い込ませていく。弱々しい息づかいだ。

この世に生まれ出たひとよ。

生まれ出たばかりのあなたは、なんと虚ろな容器(うつわ)であることか。胸を大きく開き、あなたの唇から吐き出される息のあとさき。それは眠るひとの、深い夢のようでもあり、激しいいのちが発火する、未明の火花のようでもある。傍らには、存在の暗い深淵が大きく口を開けていて。それらを、幻影のように引きずりながら。あなたは、この世に生まれ落ちる。

祝祭の音楽が、残酷に、奏でられるだろう。

たとえ、愛情に包まれていても
恩寵のひかりに包まれていても
出生が、ひかりの残酷な痛みを負うものならば
ひととは
存在とは、いったい何なのだろう。

ひかりによって、存在のありかが示されて。
あなたは、ひかりの海に浮かぶ
恩寵の舟に揺られていて。
あなたの、草のような肌には
朝露のしずくが、冷たくひかっている。

存在の外側に息づいているひかりよ。

さぁ、ひかりを纏いなさい。
そして、かけがえのない存在よ。
全身で、そのちいさな産声をあげなさい。
(きよ)らかな火よ。
ちいさないのちが息づいている火花の
あどけなき、肉の苦さよ。

存在の痛みを負いながら、土地の痛みを負いながら
存在とは、堪(こら)えきれない痛みに晒されることなのだから。
誕生は、抑えきれない痛みを伴うものなのだから。

苦しいぞっ。

揺れている。
揺らいでいる。
ひかりのような存在よ。
魂よ。
かすかな、いのちの火よ。

恩寵の、あふれでる残酷な痛みに耐えて。

いのちよ。

不毛な激情の
フォルテッシモを叩け。


*齋藤貢『汝は塵なれば』(思潮社、2013年)より



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