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石原吉郎「神話」――沈黙する時間[2018年12月25日(Tue)]

DSCN9327.JPG

横浜ランドマークプラザのツリーの根元

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◆昨日24日の夜8時近く、スーパーに行ったら、それまでアイスクリームだのワインだのが並んでいたコーナーに蒲鉾や伊達巻き、ナルトなどが次々と並べられていくところだった。
数の子は数日前から並んでいたが、明らかに占有面積を拡張して並べ終わったようす。
向かいの鮮魚コーナーにも酢蛸が並んで行き、黄VS鮮紅の色合戦の趣を呈してゆく。

クリスマス用の買い物に駆け込んでくる客も居ないわけではない時間帯だが、明朝の開店にはすっかり年越し・正月用の商品でオープンする段取りが店を挙げて進行中なのであった。

年の瀬へのあわただしさが殆ど商魂の演出であることは承知ながら、数日の内にごった返してくるのも分かっているので、未だ値札を付け終わらない紅白の蒲鉾などを買っておくことにした。
栗きんとんなどは未だ並んでいない。
黒豆は小ぶりのパック2ヶセットがあった。カゴに入れる。
えーっと、他には……雑煮に入れるブリや三つ葉はギリギリ大晦日に買うこととして……と頭はすっかりお店のペースに順応していった。

◆明けて25日、車のエンジンを点けるとナビが朝のご挨拶をしてくれる。
「メリー・クリスマス!今日は12月25日です。」
――年越しモードになっていた我が身がグイと引き戻された感じ。
(昨日も開口一番「メリー・クリスマス!」だった。なるほど、ナビはそのように設定してあるのか!と発見した気にさせられる。)

いわば、日々を生きているはずの己に主体的な時間など初めから与えられていない感じ、とでも言おうか。


神話    石原 吉郎

 まことにその朝には継承というものがなかった。一代かぎりであったといってよい。なぜなら朝につづく午後も 午後につらなる夕暮れもついになかったからだ。朝はそこでなんのきっかけもなく 単独に朝であった。われらはいっせいに目をさまし そしてなにもすることはなかった。よりしずかな海とさらにしずかな岸のあいだ 逃亡する勇気をもつものはすべて逃亡したのちのあざやかな静寂のなかで われらは無雑作にただ挨拶をかわした。そのときの挨拶は たとえば二枚の貝が閉じるさまといかなちがいがあったか。挨拶へこめるいかなるねがいももたず 合唱のさまに声をあわせたのち われらはさらに沈黙した。乾草をたばね 引鉄(ひきてつ)をおろし その姿勢のまま ただ切りおとされるときを待つばかりであった。もし切りおとされなければ 朝はただ朝であるしかなかったろう。まさにわれらはそれをねがった。朝がその凡庸において朝であることを。そののちついに来るものがなければ われらはもはや植物でありえたのだ。いずれにせよ朝が朝であることのまえに われらみずから朝でなければならぬ。われらはひたすらに晩年を待つことなく 次代を約束されなかった。われらは呼吸(いき)をとめ次の倦怠を待った。水と汀(みぎわ)の平然たるくりかえしが ついにかかわりなく神話へ熟すときを。

『続・石原吉郎詩集』(思潮社・現代詩文庫、1994年)

◆「乾草をたばね/切りおとされるときを待つばかりであった」とは押切りで乾草を切るように処刑の時を待つ、という意味であろうか。

石原自身の8年におよぶシベリアでの抑留生活を思えば、「朝がその凡庸において朝である」とは、自分の自由になる時間が与えられていない虜囚の状態を表現しているのだろう。

「いずれにせよ朝が朝であることのまえに われらみずから朝でなければならぬ」とは、己が己の主体であると言える時間が奪われている以上(=「晩年」と呼べるような未来への期待も、継承する者を持つ夢も奪われている以上)、時間の上に在る者ではなく、時間そのものであらねばならない、と述べているようだ。



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