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〈同じ空気が吸える幸せ〉[2018年11月08日(Thu)]

佐藤優米原万里(1950-2006)のエッセンスを集めて編んだ『偉くない「私」が一番自由』の中に、〈『反語法』の豊かな世界から〉と題する対談が収められている。
小説『オリガ・モリソヴナの反語法』(2002年)でドゥマゴ文学賞を受賞したときに選考委員の池澤夏樹と行った対談である。

◆チェリストのロストロポーヴィチのエピソードが面白い。

才能とそれを支える社会のありようから学校教育に話が及ぶ。

米原 世界最高のチェロ奏者と言われているロストロポーヴィチについて通訳したことが何度かあるんですが、彼がもう亡命十六年目になったころ、殺されてもいいからロシアに帰りたいと言って、コンサートが終わった後、ウォツカをがぶ飲みして泣き出しちゃったんです。ロシアにいる間は才能があるだけでみんなが愛し、支えてくれたけれども、西側に来た途端にものすごい足の引っ張り合いと嫉妬で、自分はこういう世界を知らなかったから、それだけで心がずたずたになっていると言っていました。彼にとって、才能は自分のものじゃなくて、神様が与えてくれたものなんです。モスクワ高等音楽院に入って、あまり練習しないのにすごくうまく弾けて、一生懸命努力しているのに自分より下手な人がいる。自分が努力して得たものならそれは自分のものだけれども、これは神から与えられたものだから自分のものではない。そう考えるわけです

池澤 本人だけではなくて、周囲がみんなそう考えるんですか。

米原 みんなもそう考えているんです。私はプラハの学校時代のことを思い出したんですが、歌や絵がうまい子がいると、先生たちが自分のことのように大騒ぎして喜ぶし、生徒も、その子と同じ教室にいて同じ空気が吸えるだけでとても幸せになるんです。劣等感を持たなくて済むし、人の才能をすごく喜ぶ、そういう雰囲気の場所でした。
その感じが日本に帰った途端になくなりました。ペーパーテストでみんな同じ基準で評価をされるでしょう。選択肢とか○×で、だれが答えても同じ答えになる。
自分は世の中にたった一人しかいない、かけがえのない人間だという自覚を持たないように持たないように、日本の教育はできているんですよ。機械でも採点できるテストをされているから。
でも、ほんとうは一人一人みんな違うから、それを発見してあげるのが先生やクラスメートの役割ですよね。


池澤 確かにそれがこの国の重苦しさですね。競争社会の、人がものさしで計れるという前提の重苦しさ。すべてが数字に置きかえられてしまう。

『偉くない「私」が一番自由』(文春文庫、2016年)
*下線は引用者。

◆〈才能は神さまが与えてくれたもので、自分のものではない〉と考える文化の方が、より豊かで奥行きを持っていることは言うまでもない。

◆「機械でも採点できるテスト」に血道を上げる日本の教育が、このさき大学入試に導入する記述式問題についても機械で採点できるように平準化を目指し、新科目「論理国語」はそのために契約書や取扱説明書のような、数字に置き換えられる日本語だけを扱うようになっていくだろう……と、全く楽しくない想像しか浮かばない。

昨日見学した小学校の子どもたちは「歌や絵がうまい子が同じ教室にいて同じ空気が吸えるだけでとても幸せになる」雰囲気の中にいるように感じた。
行事への取り組みの様子や飾ってある絵や書の作品たちがそのことを示していた。

だとしたら、中学・高校と進むにつれて「同じ空気を吸う幸せ」を失わせていくものがあるのではないか。

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