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藤田嗣治「サイパン島同胞臣節全うす」[2018年10月14日(Sun)]

◆藤田嗣治展で感銘を受けた戦争画(戦争記録画)は「サイパン島同胞臣節全うす」であった。

藤田嗣治サイパン島_0002-Z.jpg
藤田嗣治「サイパン島同胞臣節を全うす」(1945年)*同展図録より

◆太平洋戦争中の1944年6月から7月に行われたマリアナ諸島サイパン島における日米の戦い。日本軍は全滅、民間人もバンザイクリフから身を投げるなど多くの犠牲があった。
石垣りんの詩「崖」でも知られるあの悲劇の島である。

この絵も「アッツ島玉砕」同様に暗褐色の画面の中にさまざまな姿態の群像が描かれている。右端の中景に、崖から落ちて行く人間、その手前に祈る女や頭を抱えた母親、最も手前には、銃口を口にくわえ、引き金に足指を置いて、自決する寸前の男も描かれている。

注目されたのは画面ほぼ中央、竹槍か旗竿のような長い棒を右手にもち斜め右方向に視線を向けている女性の立像(世界史教科書でおなじみのドラクロア「民衆を導く自由の女神」と良く似たポーズ)があるが、その人物ではない。
その足元に坐る、赤ん坊代わりの人形を手にした女の方である。
女の左肩の白い服の手前にそれよりさらに白い人形の顔が描かれている。人形の衣装は赤が使われていることによって、生々しい物語がそこにこめられているようですらあるのに、女の顔は平静のままであるように見える。絶望や狂乱とは無縁の、画面全体の中で最も異質の表情が、画面中央、観る者の目と同じ高さに存在している者として引きつけずにはいない。

◆しかし、今回の図録で、この絵の写真は、作品の磁力を全く感じさせない。
上掲写真で分かるように、中央の女性が埋没してしまっているからだ。撮影条件もしくは用紙や印刷技術の問題なのかはっきりしない。何か特別な理由があるのだろうか、とすら勘ぐってしまう。

*ネット上には比較的鮮明な画像が見つかった。
昨日の記事で触れた「アッツ島玉砕」の画像も鮮明に見ることが出来たので、URLを貼り付けて置く。
https://blog.goo.ne.jp/shirakabatakesen/e/47bd5f26c0597e7e6168abc9dc338d5a

この絵も戦意昂揚どころか、銃で自決しようとする人物も描かれていることなど、軍部は扱いに困ったであろう。

*******

  崖       石垣 りん

戦争の終り、
サイパン島の崖の上から
次々に身を投げた女たち。

美徳やら義理やら体裁やら
何やら。
火だの男だのに追いつめられて。

とばなければならないからとびこんだ。
ゆき場のないゆき場所。
(崖はいつも女をまっさかさまにする)

それがねえ
まだ一人も海にとどかないのだ。
十五年もたつというのに
どうしたんだろう。
あの、
女。          

 詩集『表札など』・1968年刊)
 *現代詩手帖特集版「石垣りん」(思潮社、2005年)によった。




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