蛸の願い[2018年10月10日(Wed)]
菊地言美「雌蛸」 (2018年)
上野公園、東京藝大の奏楽堂に向かう途中に今春の卒業制作がいくつか展示されている。
中で最も愉快な作品。グルリをめぐって、タイトルにいちばんふさわしそうな角度から撮れたかと思う1枚。
*******
たとえば、この彫刻に次のような詩をつがえるのはどんなものだろう?
地べたに置かれて迷惑げな蛸のつぶやきに他ならないように思える。
ある願い 清岡 卓行
わたしは乾きたくない
山の上に浮く魚の化石のようには。
わたしは氷りたくない
凍土帯(ツンドラ)に埋もれたマンモスのようには。
わたしは潜みたくない
原始の住居の跡の穀物の粒のようには。
わたしは狂いたいのだ
海の底から噴きあがる焰のように。
わたしは泣きたいのだ
砂漠の中を動きまわる湖のように。
わたしは消えて行きたいのだ
青空に羊雲を残す嵐のように。
『西へ』(講談社、1981年)所収。
『清岡卓行全詩集』(思潮社、1985年)によった。
1枚目の位置から左回りに動いてみるとこのような姿。
左奥に奏楽堂が見える。