CANPAN ブログ検索
Loading
  • もっと見る
« 2018年08月 | Main | 2018年10月 »
<< 2018年09月 >>
            1
2 3 4 5 6 7 8
9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22
23 24 25 26 27 28 29
30            
最新記事
カテゴリアーカイブ
月別アーカイブ
日別アーカイブ
《わたしたちの向かう方位》[2018年09月03日(Mon)]

揺れて、揺れて    齋藤 貢

揺れている。さざ波のような小刻みなうねりが、遠く地
の果てから伝播してきて。それが、わたしたちの生活の
器に注がれて、もう、器をあふれ始めている。不安も、
悲哀も、悔恨も、揺れている水のなかにある。

揺れて、揺れて。あふれて、あふれて。
永遠のほうへと、わたしたちの魂を、運んでいくのだろ
うか。

大きな手によって、注がれた水が、地の縁(ふち)を越えてあふ
れ始めてしまった。こころの器も堪(こら)えきれずに、あふれ
出てしまったから。

わたしたちは、これからどこへいくのだろう。

落ち着いて、周囲の気配を読み取らなければならない。
それは、わたしたちの向かう方位を考えることだ。例え
ば、風の呼吸を読み、空から堕ちてくるひかりの雫に、
わたしたちの未来がひとつずつ置かれていくのだから。

やがて、水が、胸の高さを越えれば、息もできなくなっ
てしまうだろう。だから、わたしたちは、ひたすらに高
みへと向かう。襲ってくるのは、わたしたちの、いのち
の水なのだという逆説に、思考が、論理が、感情が、ひ
とつの束に固まらない。からだが、支離滅裂になって、
わたしから離れていく。

わたしは、壊れる。破壊されるのではない。それは、内
側から次第に壊れていく。

器からあふれ出る水に溺れながら、ひとつのからだに固
まらないわたしを、遠くで黙って見ているわたしがいる。

たぶん、それは永遠のほうへ、水があふれていくからな
のだろう。水は、わたしたちを導く。永遠の向こう側へ。
いのちの向こう側へと。強制的に。だから、わたしは、
支離滅裂になって、壊れる。

水に呑みこまれれば、永遠に手が届くなどと、いったい
誰が言ったのだろう。そして、ひとは、自分の器ばかり
ではなく、この世の大きな器までもなくしてしまったこ
とに気づく。あふれる水を止める、大きな手の持ち主な
ど、どこにもいなかったことに、改めて気づく。

それにしても、揺れて、揺れて。震えている。

こんなにも、震えているのは、わたしたちのからだなの
だろうか。それとも、こころなのだろうか。それとも、
地の果てで、巨大な器が、震えているのだろうか。

永遠というものなど、この世にはないと、わかっていた
はずなのに、器の縁(ふち)を摑んでいる大きな手が、そのとき、
わたしたちを掻き回しはじめて。わたしというちいさな
器が、揺れて、揺れて。震えている。


  齋藤貢『汝は、塵なれば』より(思潮社、2013年10月)


◆2011年3月11日、作者は勤務校の福島県立小高商業高校にいた。福島第一原発から北西へ約14キロ。

たとえば6連目、《空から堕ちてくるひかりの雫に、/わたしたちの未来がひとつずつ置かれていく》は、流亡の中でかろうじて希望をつなぎうることばであるかも知れない。
ただし、それはわたしたちが《落ち着いて、周囲の気配を読み取》り、《わたしたちの向かう方位を考えること》を、しぶとく愚鈍に続けることによってのみかろうじて可能な、といった程度のものにすぎない。
いのちの向こう側へと》(10連目)導かれていくわたしたちが、その向こう側で再び生き始めるのかどうかは分からない。
はっきりしているのは、少なくとも、いま「わたし」(「わたしたち」ではないことに留意)は《支離滅裂になって、壊れる》、ということだ。

斎藤貢「汝は、塵なれば」.jpg


工藤直子「海のこころ」[2018年09月03日(Mon)]

◆一般社団法人JEAN「日本政府は海洋プラスチック憲章に一日も早く署名を!」と呼びかけている。
Change.org」のサイトから
https://www.change.org/p

週明け猛烈な台風が襲来しそうな中、増水したらまた大量のプラゴミが海へと流れ下っていくのだろうと想像してしまう。
世界中をつないでいる海の果てしない広さと深さに甘えていると、しっぺ返しを喰らうだろうと思わずにいられない。
海が呑み込むゴミのほとんどは街の人間が吐き出したゴミなのだ。


海のこころ  工藤 直子

海は ひろいから
海の こころも
ひろい ひろい
ひろすぎて
こころの むこうのはしは 
よく見えずに なぞ

海は ふかいから
海の こころも
ふかい ふかい
ふかすぎて
こころの 奥の奥のほうは 
よく見えずに なぞ

なぞをかかえて
海 目をさまし
なぞをかかえて
海 ねむる



ともだちは海のにおい.jpg
工藤直子(文)・長新太(絵)「ともだちは海のにおい」
(理論社、2003年)
 

| 次へ
検索
検索語句
最新コメント
根来珠青
銃剣道 歴史に目をふさぐおぞましさ (03/29) 当ブログ管理人
ジャーナリスト・安田純平さん解放との報【追記】 (10/26) 3億円で買える銃と弾
ジャーナリスト・安田純平さん解放との報【追記】 (10/25) マキシミリアナ・マリア・コルベ
コルベ神父のこと その2 (06/23)
若き音楽家リュカ・ドウバルグ (06/09)
タグクラウド
プロフィール

岡本清弘さんの画像
http://blog.canpan.info/poepoesongs/index1_0.rdf
http://blog.canpan.info/poepoesongs/index2_0.xml