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斎藤紘二「二都物語」[2018年08月11日(Sat)]

5夏 367浦上天主堂前の聖母子像-A.jpg
長崎・浦上天主堂前の聖母子像


二都物語  斎藤 紘二

 1
選ばれた西方の二つの都市
ヒロシマ・ナガサキ
右の頰ヒロシマを打たれた後で
左の頰ナガサキを差し出したぼくらの祖国
あわれな聖戦の最後に
生け贄として捧げられた二つの都市よ

廃墟という言葉は
ぼくらの知らぬ間に
周到に準備されたものだった
ヒロシマ・ナガサキ
この二つの都市のために

一瞬にして
すなわち文字通り
一回の瞬(まばた)きのあいだに
美しい二つの街は壊滅した
およそ七十五時間を経て
二つの街は廃墟と化した

 2
歴史をたどれば
広島・長崎両県は
隠れキリシタンによって
一本の糸で結ばれていた
江戸が明治に改まるころ
浦上四番崩れの激しい弾圧の後で
長崎の隠れキリシタンたちが
萩や津和野のほかに 福山にも流されたのだ

それからずっと
浦上四番崩れで襲われた秘密聖堂から
原爆で破壊され
やがて再建される天主堂の苦難の道のりを
浦上の聖母マリアは見つめてきた

ああ そしてこれは幻聴だろうか
福山に流されたキリシタンたちの
オラショの祈りがいま聞こえてくるようだ
それはヒロシマの被爆者の祈りとともに
懐かしい通奏低音となって
瀬戸内と天草の海を渡ってくるようだ

 3
二つの都市を結ぶ細い運命の糸
それをぼくらが信じようと信じまいと
八月六日と九日はめぐってくる
ヒロシマとナガサキにそれぞれ
原爆忌はめぐってくる
だがそれにしても
一つでさえ十分に悲しいのに
二つの原爆忌をもつ国は悲しすぎる

だから 忘れてはいけない
運命にもてあそばれ
生贄として捧げられた西方の二つの都市の
そのあまりにも不条理な物語を


 *浦上四番崩れ  浦上秘密聖堂の隠れキリシタンに対する江戸幕府の弾圧(一八六七年)

 ★斎藤紘二(さいとうひろじ)『二都物語』(思潮社、2009年)より。


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