幻のイサム・ノグチ《広島原爆慰霊碑》[2018年08月05日(Sun)]
幻のイサム・ノグチ《広島原爆慰霊碑》
◆「イサム・ノグチー彫刻から身体・庭へー」展では、広島の原爆慰霊碑の習作模型が展示されている。
地下に埋まる脚の部分をもっと広げれば、最晩年の《タイム・アンド・スペース》(高松空港モニュメント。1989年)にも通う形をしている。
現在の慰霊碑もカーブを持つ形は似ているが、屋根の下にできた空間の向こうに原爆ドームを見るようになっているのとは違う。
地上に生き残った者たちは、地下に眠る人々が語りかけるものに耳を傾けるためにその前にたたずむ、そのようなモニュメントに見える。
イサムの作品では、そのように耳を澄ますことが自然であるようだ。
あるいは、死せる者も生ける者も共に地上と地下とにまたがる胎内に居て、外の世界の音に注意深く思いをこらす時間を持つように構想されたように思う。
イサム・ノグチ「広島原爆慰霊碑(習作模型)」(1982年。オリジナルは1952年)
◆埴輪の上部に由来するその形は実は全体のごく一部を成す地上部分で、プランでは、地中に深く伸びた支柱によって支えられたモニュメントの真下、地下部分に原爆による犠牲者の名が収められることになっていた。
原爆慰霊碑案
*写真はいずれも同展図録「20世紀の総合芸術家 イサム・ノグチー彫刻から身体・庭へ」より(平凡社、2017年)。
◆イサム・ノグチの原爆慰霊碑は、イサムにアメリカ人の血が流れているということを理由に実現に至らず、それまで強くイサムを推してきた丹下健三がその任を承けることになった。
その後イサムは太田川にかかる橋の欄干のデザインを依頼されて《つくる》と《ゆく》と題する欄干を制作した。
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