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龍神[2018年07月25日(Wed)]

◆朝のひと湿りに加えて夜にも短時間のスコール。
収まった後にジワリと暑熱が息を吹き返す。

集中豪雨に被害に見舞われた岡山県笠岡市に住む詩人・坂本法子の近刊『夕映えのなか』から一編。


龍 神     坂本 法子

熱帯夜になった
首すじにじっとりと汗が出た
大きな音がして窓に近づくと

突然 空から龍が光を噴きながらおりてきた
同時に 大木が真っ二つに裂けた
ピカリ ピカリと光輝く

龍は地面に線を描いて這ってゆく
風呂場へ入りこんだ
尾っぽで 窓をたたいている

わたしはあわてて床の間をみると
「龍神の画」がかかっている
大きな音とともに龍の目がギロリと光った

大粒の雨滴がポツリ ポツリ
急に 大雨が滝のように降ってきた
龍ははげしく 踊り狂い
天井にはりついている

翌朝 田んぼをみると
ぽっかりと大穴があいている
雷が田んぼに落ちたのだ

雷は稲妻・稲光と言われ
稲の豊作をもたらすと言われる
人々は水田に青竹をたてて
しめ縄をはって龍神を祝った


坂本法子夕映えのなか.jpg
坂本法子詩集『夕映えのなか』(砂小屋書房、2018年)

◆岡山はかつて首相・橋本龍太郎の票田であったが、足もとの治山・治水は後回しにしたのであろう。堤防改良の請願は長いあいだ棚ざらしになった。その間も水害はあった。
名前に「龍」の一字を持っていても大地に恵みをもたらす努力を欠いては、人々の敬虔さをもってしても里は荒廃するばかりである。


詩集には「洪水」と題する詩もある。

《濁流がのの字を書いて
いきおいよく うずまきながら
流れてくる ながれてくる

わたしは歩けない
車も通れない
デイサービスの車も来ない
郵便やさんも来ない
子供たちは学校へも行けない


(中略)

向かい側の山のふもと
墓所がくずれそうだ

洪水は「モルダウ」川のように
ゆっくりと この街を通りすぎた》


◆モルダウもしばしば氾濫しプラハの街も泥で覆われて来た。
専門家によるとシルクロードパターンと呼ばれる偏西風の蛇行が、ヨーロッパを襲った熱波を数日後には日本にもたらすのだという。

地球規模で襲ってくる猛威に人間が打てる手は限られている。

カジノ法(IR法)で各地に賭場を開帳するよりは、青竹とシメ縄で画した結界に籠もり、精進潔斎して国民に謝罪すべき人間が余りに多い。


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