CANPAN ブログ検索
Loading
  • もっと見る
« 2018年06月 | Main | 2018年08月 »
<< 2018年07月 >>
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31        
最新記事
カテゴリアーカイブ
月別アーカイブ
日別アーカイブ
非社会的・非理性的存在としての人間[2018年07月10日(Tue)]

DSCN7590-A.jpg
境川近くの蓮池で。

*******

◆今朝(2018/7/10)の朝日新聞にオウム事件をめぐる作家・高村薫の寄稿が載っている。
これまでさまざまな人々が論評してみせたであろうにそのいずれにも満足しない人間の、知情意備えるがために絶望的になりながらも、そうなるまいとする切実さをもって綴られたことばを抄出しておく。

精神世界 無関心な私たち  
  オウム事件 言葉にする努力を放棄

裁判では、宗教教義と犯罪行為の関係性は慎重に排除され、一連の事件はあくまで一般の刑法犯として扱われたが、その結果、神仏や教祖への帰依が反社会的行為に結びつく過程は見えなくなり、宗教の犯罪という側面は手つかずで残された。しかしながら、どんなに異様でも、オウム真理教は紛れもなく宗教である。それがたまたま俗世の事情で犯罪集団と化したのか、それとも教義と信仰に導かれた宗教の犯罪だったのかは、まさにオウム事件の核心部分であったのに、司法も国民もそこを迂回(うかい)してしまったのである。
形骸化が著しい伝統仏教の現状に見られるように、日本人はいまや宗教と正対する意思も言葉ももっていない。この精神世界への無関心は、理性や理念への無関心と表裏一体であり、代わりに戦後の日本人は物質的な消費の欲望で人生を埋めつくした。地道な言葉の積み重ねを失ったそういう社会で、若者たちの求めた精神世界が既存の宗教でなかったのは、いわば当然の結果だったと言える。彼らは伝統仏教の迂遠(うえん)な教義と権威を拒否し、手っ取り早いヨガの身体体験に出会って社会に背を向け、疑似家族的なカルト教団に居場所を求めたのである。

   (第2段落全文)

◆「精神世界への無関心は、理性や理念への無関心と表裏一体」であるという指摘に耳を澄まそう。高所からの批判や警世の言ではなく、濁世に身を置いて汚泥の中から己とこの世にとって意味ある言葉を紡がねばならない者が泥中で辛うじて摑んだ蓮の茎のごときものだ。

第3段落の後半から結びまでも引いて置く。

そしてもちろん、信心と帰依は信仰の本態である。また信仰は本来、自身を守るための殉教や殺戮(さつりく)もあり得る絶対不可侵の世界であり、もとより社会制度や通念とは相容(あいい)れないところで立っている。オウムをめぐる言説の多くが生煮えに終わったのは、信仰についてのそうした本質的な認識が私たちに欠けているためであり、自他の存在の途絶に等しい信心の何たるかを、仏教者すら認識していないこの社会の限界だったと言えよう。
 それでも、いつの世も人間は生きづらさを和らげる方便としての信仰を求めることを止(や)めはしない。オウム真理教が私たちに教えているのは、非社会的・非理性的存在としての人間と宗教を、社会に正しく配置することの不断の努力の必要である。


「非社会的・非理性的存在としての人間と宗教を、社会に正しく配置すること」は、宗教と直接には関わらない事件、たとえばひと月前(6月9日)の「のぞみ265号」における殺傷事件や、間もなく2年が経とうとしている津久井やまゆり園事件についても必要なことである。あるいは元看護師が容疑者として逮捕された旧大口病院の事件も慮外に押しやることなく考えねばならないかも知れない。
〈非社会的・非理性的存在としての人間〉〈それを包摂する社会の在りよう〉を不断に考え、泥中に玉の緒を手探りする作業を不断にやらねばならないのだと思う。果たして花が開くか全く保証の限りではないにせよ、その日の訪れを待つことは、信仰の有無に関係なく、いかなる人間にも可能であり、かつそのように求められているはずではないか。



| 次へ
検索
検索語句
最新コメント
根来珠青
銃剣道 歴史に目をふさぐおぞましさ (03/29) 当ブログ管理人
ジャーナリスト・安田純平さん解放との報【追記】 (10/26) 3億円で買える銃と弾
ジャーナリスト・安田純平さん解放との報【追記】 (10/25) マキシミリアナ・マリア・コルベ
コルベ神父のこと その2 (06/23)
若き音楽家リュカ・ドウバルグ (06/09)
タグクラウド
プロフィール

岡本清弘さんの画像
http://blog.canpan.info/poepoesongs/index1_0.rdf
http://blog.canpan.info/poepoesongs/index2_0.xml