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「夏は来ぬ」の季節感[2018年05月20日(Sun)]
DSCN7155ウツギ(卯の花)−A.JPG
◆卯の花(ウツギ=空木)。
「夏は来ぬ」佐佐木信綱の詩に小山作之助が曲を付けた唱歌)の最初に出てくる。この季節の花である。まじまじと初めて見た。

◆名を知るのみで実物を知らぬものがこの世界には何とたくさんあることか。

先日、この「夏は来ぬ」を5番まで歌う機会があって、その4番で「(おうち=センダン)」に出くわした。普通はせいぜい3番までだからまず出会わない。
その4番の歌詞は次の通りである。

楝(おうち)ちる 川べの宿の
門(かど)遠く 水鶏(くいな)声して
夕月すずしき 夏は来(き)ぬ


◆クイナも境川で初めて見た。

クイナの名は、大江健三郎の文章で、子息・大江光さんが子供のころ、鳥の鳴き声を聴いて「これはクイナです」と初めて言葉を発したというエピソードを読んで刻み付けられた名前である。
言葉の遅かった光さんが、くり返し聴いてきた野鳥のレコード、そのナレーションの調子で初めて言葉を発したのだった。
ヘレン・ケラーの「water」同様に、我々もその場に立ち会ったかのような強い印象を残す場面である。

◆「夏は来ぬ」の五番は以下の通り。

五月(さつき)やみ 蛍飛びかい
水鶏(くいな)鳴き 卯の花咲きて
早苗植えわたす 夏は来ぬ

◆「蛍」は3番にも出てくる。
文語体で「五月(さつき)」が旧暦では卯月(四月)に続く夏の真ん中の月と承知していても、もう蛍の季節なの?と、北国生まれの人には違和感があるだろう。
雪国生まれの自分などにとっては、蛍は完全に夏休みのもの(7〜8月)であって、捕らえて来た蛍を蚊帳の中に放し、その明滅を眺めながら眠りに落ちたものだった。

だが、関東南部であるここ境川あたりでは、田植えは6月初め(今年の暦では6月1日は旧暦の4月18日)、蛙の大合唱が夜の田んぼに響きわたる季節を迎えて、6月中〜下旬(今年の旧暦で言うと五月初めから中旬に当たる)が蛍の季節である。
歌詞にあるとおり、「五月やみ…五月雨(さみだれ=梅雨時の雨)」のころの闇夜にともる蛍火というわけである。

◆佐佐木信綱(1872-1963)は三重県鈴鹿に生まれ、10歳で上京した。
教育唱歌であるこの歌は関東あたりまでの季節感に即して書いたと言えるだろう。

◆2006年の教育基本法の目標に「伝統と文化を尊重し、それらをはぐくんできた我が国と郷土を愛するとともに、他国を尊重し、国際社会の平和と発展に寄与する態度を養うこと。」(第二条の五)が盛られたことによって、学校等で唱歌を歌わせる動きが強まっているが、唱歌に歌われた季節感一つとっても全国どこにも当てはまるとは言えない。

自分の住む地域の風土や季節感が歌と合致しないことから生じる違和感を抱えたままでいるのは居心地の悪いものである。
地方出身者が生まれ故郷に否定的な感情を育ててしまうことも現にあった。
固有の季節感を唱歌の方に合わせて修正・変形するような顛倒に陥るケースもあったはずである。

◆上の「教育基本法」の条文で言えば、「我が国と郷土」はひとくくりにされて、その中に実在する土地土地の違いは捨象されがちである。
条文はこのあとに「他国・国際社会」をもって来ているために「我が国と郷土」は一体のものとして、「他国」や「国際社会」に対峙する心構えとして愛国心を持つよう育てるのが当然であるという方向になだれ込みやすい。
(*「愛国心」という語をナマでは用いずに同じ効果を意図したのが「伝統と文化を尊重し、それらをはぐくんできた我が国と郷土を愛する」という「国家と郷土」を意図的に溶接した表現である。今年度、幼稚園からスタートした改定「学習指導要領」には、強迫的なものに取り憑かれたごとくにこの文言が倦むことなく繰り返されている。)

少なくとも愛国心を優先させる人々は、「我が国と郷土」との間に夾雑物や不純物が混じってはまかりならぬ、と考えているようである。
だが、蛍ひとつとってみても季節に対する感覚は全国一律ではない。当然すぎる話なのだが。

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