皇居北の丸のお堀で
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谷川俊太郎『詩めくり』から
二月二十三日
風呂に入っている若い中国人にむかって
〈これ何?〉と大声で訊ねたのは
ラジオの前にいるイギリス人の女である
男がきれいな英語で
〈G線上のアリア〉と答えたので
女の八歳になる息子は首筋に微風を感じた
(ちくま文庫、2009年)
◆日々のつぶやきや発見に加えて映画のワンシーンのような詩もある。
高橋源一郎の言葉から生まれた一日一編の詩が、故・天野祐吉「広告批評」が最初に出す単行本のためにとプレゼントされたという生い立ちの詩集。