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畠山千代子「冬の夜」[2018年01月15日(Mon)]

DSCN5290.JPG
たぶのき(椨)。日大・生物資源科学部キャンパスで。

*******

畠山千代子『隻手への挽歌』、作品の配列は概ね制作順だという。
日付けの記載はないが配列からみて1934〜5年頃と思われる次のような詩があった。
弘前女学校(現在の弘前学院聖愛中学高等学校)に勤務していた頃である。

冬の夜   畠山千代子

小路を行く。
そばやの声が
冬空に凍りついて
街が寒々とねむりつづける。
洗ひ湯の湯気がスイスイ流れて
深雪はいよいよつめたく門をかため
雪片は
車ひく男の口びるから
わづかなぬくもりまでも奪ひ去る。

暗い部屋に子を抱いて
賣り上げの金を待つ妻の姿が
まつ白な雪道の上にちらつくけれど、
男の思案はいよいよさえて
街のねむりはいよいよ深まる。



◆1934(昭和9)年は大凶作の年であった。
「昭和史全記録」(毎日新聞社、1989年)によると、10月上旬の米の予想収穫高(全国)は前年の2割6分の減。明治38(1905)年以来の凶作に匹敵すると報じている(東京日日新聞)。

・岩手県教育課では小学校児童を総動員して冬の来ぬ今の中に薬草と食料となる草根木皮を採取させ薬草は直ちに金に代へ、草根木皮は貯蔵させることに決定(報知新聞)。
・青森県三戸郡の一村の如きは全然米食せず粟または稗だけを食つてゐるものが十五部落あり、しかも副食物が僅(わずか)に菜ッ葉ぐらゐで漸く胃の袋を満たしてゐるといふに過ぎず……同県警察部の調査によると、生活苦の犠牲となつて泥沼に沈み行く子女は現に七千八十七名……(東京日日)。などとある。
・11月上旬の読売新聞記事では、東京府職業紹介所長と東京府社会課員が東北六県視察、東北六県から出稼ぎしている婦女子の数は五万八千百七十三名(1934年の1〜9月までの集計)にのぼり、その中に身売りされた娘が多数を占めると報告している。
大凶作に加えて繭の価格の暴落で地方の窮状は極点に達していた。

◆詩は弘前とおぼしい街の雪の夜。そばの屋台を曳く男とその帰りを待つ妻。
男の思案は冴え返るばかりだが、まなかいに姿がちらつく家族に売上金を持って帰ることは未だできない。
農村の窮迫と疲弊は地方経済全体に及ぶ。
ふところも冷え切った雪の夜の街で、そばを注文してくれる客は一向に現れないのだ。
男の瞋恚(しんい…いかり)を何にぶつけたらいいのだろう。

◆前年(1933年)は2月に小林多喜二の虐殺があり、3月には満州問題で孤立した日本は国際連盟を脱退、外圧を軍事力でねじ伏せる国へと突き進む。ドイツでは全権委任法が可決してヒトラーが独裁政権を確立した。

「昭和史全記録」1934年11月の頁には木の皮をはぐ家族の姿とともに、献金で作られた戦車「愛国号」の命名式の写真が載っている。

1934青森木の皮を食べる.jpg(青森県)

1934愛国号戦車_0001.jpg
献金で作られた戦車の命名式


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