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志樹逸馬「わたしの小さい手に」[2017年08月19日(Sat)]

DSCN2942.JPG
 ハグロトンボ

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わたしの小さい手に
   志樹逸馬

わたしの小さい手に
世界の大きい手の
そえられていることを感じる

世界を見れば
わたしがどのように
つくりかえられてゆくかを
感じる

わたしを見れば世界が
世界を見ればわたしが
わかってくるように
思える

      1958.1.24

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鶴見俊輔が編んだ「日本の百年」の第9巻「廃墟の中から」(ちくま学芸文庫、2008年)の最後に載せてある詩。
志樹逸馬(1917ー1959)の生涯についても紹介されている。

◆志樹逸馬は和歌山に生まれ、中学1年生の時にハンセン病を発病して、東京都下の全生園に入所。以後、家族からのたよりもない年月をハンセン病療養所に暮らした。

タゴールの「生の実現」に出会ってその全部を筆写し、詩人として新しく生まれた。

戦後の1955年、中国から引き揚げてきた姉とその子どもたちから手紙が届く。
42年の生涯を岡山県長嶋の愛生園で閉じるまえに残したのが上の詩である、という。

◆鶴見俊輔は、戦後日本との往き来が途絶していたシベリア抑留者や中国からの引き揚げ者のドキュメントのあとにこの詩を置いてドキュメントの結びとした。

社会や世界から切断された世界にあった志樹逸馬の詩が、ことばによって世界と自分を認識していること、そうして世界の方からこちらに作用する力が圧倒的であるにもかかわらず、それに対峙・抗し、逆にこちらが世界を変えていく主体であることの確かな例としてこの詩を我々のために記録したのである。


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