はつらつはつらいよ[2017年08月05日(Sat)]
カイノキ(楷の木)。
◆文科省旧庁舎1Fの情報ラウンジ前に別名「学問の木」と説明があった。
葉が整然と並んでいるので楷書に通じるとして「楷の木」とか。
「学問の木」と呼ぶのは孔子の墓所に弟子の子貢がこの木を植え、それが日本にも広まったためという。雌雄異株だそうで、2本植わっていたのはオス・メスの対であるのか、違いを見届けようとしたが、場所は文科省旧庁舎と高層合同庁舎に挟まれた小暗い一角で、良く分からなかった。
「楷書」にしても学問にしても本来、しゃちこばって息を詰めたような代物ではないはずで、もっと伸び伸びできる場所をあてがってあげれば良いのに、と同情してしまう。
もっとも、新大臣を迎えても「ヘビににらまれた蛙」で神妙にするしかないならば、文科省の今置かれた境遇を象徴する木なのかも知れない。
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条 例 木村大刀子
〈男 は つ ら
と キイを叩いている男の
無意識の原っぱに
トランクを提げた寅さんが
ひょいと立ち上がる
なんてことが あったのかどうか
指先がひょいと動いて
〈男はつらいよ〉と印字してしまった
〈男はつらつ〉という条例の成案の清書
新潟県中里村の
〈雪国はつらいよ条例〉が
中学公民の教科書に紹介されていて
センスいいね ユーモアもあるし
やるじゃない 中里村
なんて噂ばなしをしていたら
それが大きな間違いで
正しくは〈雪国はつらつ条例〉
ご自慢の条例を誤記された村長さんは
趣旨とまったくあべこべで イメージダウンだ*
と カンカンになって訂正を求めた
間違いはいけないよ
イメージアップは春の雪と消え逝き
なんて 私の中の寅さんの溜め息
〈男はつらつ〉ってのも ちょっとつらいよ
隣の寅さんも困惑顔して呟いている
大義はつらつ
侵攻はつらつ
自爆はつらつ
はつらつはつらいよ
*「朝日新聞」による
★詩集「ゆでたまごの木」(思潮社、2012年)所収