ウソ[2017年05月26日(Fri)]
◆ミュシャ展に合わせて「チェコ人形劇の三つの顔」展が国立新美術館1Fロビーで開かれている。
5/24〜6/2。その後7月にはチェコセンター、11月には飯田市の川本喜八郎人形美術館で。
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ウソ 川崎洋
ウソという鳥がいます
ウソではありません
ホントです
ホントという鳥はいませんが
ウソをつくとエンマさまに舌を抜かれる
なんてウソ
まっかなウソ
ウソをつかない人はいない
というのはホントであり
ホントというのはえてしてウソであり
冗談のようなホントがあり
涙ながらのウソがあって
なにがホントで
どれがウソやら
そこで私はいつも
水をすくう形に両手のひらを重ね
そっと息を吹きかけるのです
このあたたかさだけは
ウソではない と
自分でうなずくために
川崎洋「教科書の詩をよみかえす」
(ちくま文庫、2011年)
◆川崎洋は自作のこの詩を取り上げながら、柳田国男の文章を紹介している。
〈ウソという鳥の名は、本来は啼き声から来て居る。すなわち人間のウソも、かつてはあんな声をして居たので、つまりは真面目らしくない作り声だった。口をすぼめて唇の輪を円く、突出したままで音を発すれば、そのウソの音が出る。即ち今日のウソブク(嘯く)である〉
〈誰が聴いてもいと容易に、本物でないとわかるものが昔のウソであった〉
柳田国男『不幸なる芸術』
◆これに照らせば、現代のウソは容易にはシッポをつかませない、まことしやかな風体をしている、ということになるのだろうか?
それなら芸の手並みを拝見したいくらいだが、あいにく永田町界隈の「ウソ」は、鳥の方のウソにはとうてい及ばず、初手からバレバレで、その上に耳ざわりな雑音が混じる(直近では加計学園に関する文科省文書が調査しても見当たらなかったという文科大臣報告に混じる内閣府や官邸の恫喝や叱責の気配)。
G7開催中のイタリアのシチリア島でも息を吐くようにウソをついていることだろうかと案じられてならない。諸外国相手のウソの献酬も御免蒙るが、国内で留守を預かる官房長官・大臣らの答弁がまたヒド過ぎる。木で鼻をくくったような物言いに終始し、かてて加えて謀議の臭いフンプンとしていてよろしからず。
「力強いメッセージ」も括弧付き「正義」も要らない。
ただただ正直者をトップに据えたい。