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ミュシャ「スラヴ叙事詩」その2[2017年05月22日(Mon)]

1原郷のスラヴ民族-A.jpg
アルフォンス・ミュシャ(ムハ)「スラヴ叙事詩」
1「原故郷のスラヴ民族」
(部分。1912年)

◆「スラヴ叙事詩」全20作の中でもひときわ目をひく作品。これも610×810cmの大画面。
上の右上に多神教の祭司と武器を帯びた若い戦士と平和を象徴する娘が夜空に浮かんでいるのだが、上の画面の左奥から馬に乗った略奪者の姿が炎を背景に浮かび上がって見える。
観る者を立ち止まらせるのは手前におびえたようにうずくまる二人の人物だ。
アダムとイヴを表すとされる。
彼らの前には刈られた草と鎌が置かれている。
日々の糧を刈り入れる鎌は迫る脅威に抗う時には武器となるだろう。
だがそれは今、彼らの前に置かれたままだ。それを手にして闘うのか、放棄して運命に身を委ねるのか。二人の手は不思議にブレて見える。彼らの恐怖と逡巡を表しているのかも知れない。
観る者も満天の星たちに包まれるように感じるのだが、この二人から目を離すことができなくなる。彼らは我々だ、と気づかされるのだ。

かくして、画面の一番手前、我々に最も近いところに置かれた「鎌」の意味が分かってくる。
略奪や圧迫に抗する武器は、我々が自ら糧を得る手立て、それ自体なのだということ。


DSCN1369-A17聖アトス山.jpg
17「聖アトス山」(部分。1926年)

◆アトス山はギリシャ正教会最古の聖地。
作品の上方奥に聖母と幼子キリストが描かれ、その手前下に女性の姿をした天使が浮かんでいる。
左の天使は「純潔」、右の天使は「信頼」と記された札を掲げている。


DSCN1362-A19ロシアの農奴制廃止.jpg
19「ロシアの農奴制廃止」(部分。1914年)

◆1861年のロシアにおける農奴制廃止を描く。モスクワのワシーリィ大聖堂前、雪の積もった赤の広場に、たたずみ、ウォッカをあおり、あるいはひざまずいて拳を突き上げ……さまざまな姿の民衆が描かれている。
中で、上の部分は子どもを抱き寄せてこちらを見据える母親の目が我々を立ち止まらせる。
ここでも、この親子は我々だと思い至ることになる。


DSCN1376-A18スラヴ菩提樹の下でおこなわれるオムラジナ会の誓い.jpg
18「スラヴ菩提樹の下でおこなわれるオムラジナ会の誓い」(部分。1926年)

◆「スラヴ叙事詩」の中で唯一未完成の作品。愛国心に燃える若者たちの団体オムラジナを描く。
彼らの要求は普通選挙からスラヴ文化の再生に至るまで多岐にわたったが、20世紀初頭に弾圧された。
中央の光の周りに9人の若者たちがひざまずき、つないだ手を掲げているさまはフリーメイソンの環を思わせる、という。
画像はその中で最もはっきりと描かれた少年の姿。
口を結んだ意志的な表情で、輝きに充ちている。


*作品の解説は「ミュシャ展」図録(求龍堂発行、2017年3月)によった。


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