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石垣りんの十二湖探訪[2018年09月27日(Thu)]

DSCN8574.JPG
モンキチョウが留まった花、花弁の数は花を見分ける決め手の一つだと思うので数えて帰った。
10枚。ネット上の色んな画像に当たると「キクイモ」らしい。
子どものみぎり見慣れたはずの「キクイモ」とは背丈その他感じが違う気がするのだが、とりあえず多数の意見に従っておく(主体性がないナ)。
異なるものに所によって同じ名前が冠せられていることはよくあることではあるが。

*******

◆だいぶ前に出た現代詩手帖特集版「石垣りん」がたまたま手に入った。
2005年に詩人が亡くなって間もなく出た追悼号で、自作朗読CDが付いている(もったいなくて未だ聴いていない、というより、どのように声に対したら良いのかが分からないので、肚が坐らない感じ)。

◆未刊詩篇の中に十二湖を訪れた時のものがあった。
いまは青森県深浦町ということになっているが、白神山地の懐。かつては岩崎村に属していたのではなかったか。高校1年のころ、その村出身の同級生がいた。彼は弘前市内に下宿して高校に通って来ていた。
詩にあるように弘前からも随分遠い村で、訪ねる機会はなかったものの、自分の中では懐かしく床しい村の名であり続けていた。実際に十二湖に行ったのは石垣りん同様に、一度きり。


消 息   石垣 りん

十二湖は 私に取って 遠いところだった。
青森県 弘前へ行ったとき
土地の人が車に乗せて 連れて行ってくれた。
岩木山のふもとをまわり
日本海沿いの道を 三時間近く走って。

晩秋 紅葉のさかりは 過ぎていた。
同行 二人の男性と 私と。

山路では 高い高い木の梢から
木の葉がしきりに降ってきた。
くるくると 独楽のように 落ちてくる葉
右に左に舞いながら 下りてくる 枯葉。
それを見上げて ひとりは どうしても蝶であると 着地
 する直前まで 言い張った。
さあっと 時雨が来て 三人を追い立て
次に晴れた。

いくつかの湖をめぐり
最後に 青湖という名の ほんの一抱えに見える 小さ
 い湖に出た。
水の底には 落葉の蒲団が敷かれていた。
水の面には 黄金色の魚が二匹
二十糎ほどの細い美しい姿で 浮かんでいた。
死んでいるのか と目を疑った。
ほとんど静止していた。
湖面の景色は そのまま 私の記憶に静止した。
帰途は 雷鳴とどしゃぶりの夜になった。

それから一年
東京に住む私の所に 弘前の人が訪ねて来た。
先日また 十二湖へ行ってきました
青湖には いましたよ あの 魚が。
やはり二匹でしたか。
ええ。
何という名の魚でしょう。
さあ こんどはすこし 泳いでいましたがね。

生きているのか と思った。

私も 生きています。
 (初出「現代詩手帖」1987年1月号)
 
◆最後の2行にギュッと心臓をつかまれる感じがある。
作者と湖の魚たちと読む者がそれぞれに生きて在ることを悟らされてハッとする。
さあっと降る時雨を受けて、かすかな身震いをするように、ともに区々たるいのちながら、秘めた矜恃をゆたかに湛えて、しかし凝結した魂そのもののように、みじろぎもせずに。

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http://blog.canpan.info/poepoesongs/archive/999
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