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「全国学力・学習状況調査」の大問題[2018年08月31日(Fri)]

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◆トロロアオイ。去年もこの次期に同じ場所で咲いていたように思う。
この花が咲いていた去年の8月下旬は冷蔵庫がダウン。
おととしの真夏にはパソコンがダウンするも、奇跡的によみがえり、ついでに少しばかりパワーアップしてもらった。

◆今年の8月最後の日、外はやはり35℃をやや超えた。
家電でダウンした物は幸い無かったが、キウイの蔓が屋根裏の格子窓まで伸びていたので伐ろうと屋根裏に入って窓を開けたら、レール部分に蜂が4,5匹ひからびていた。夏前にアシナガ蜂の巣を2つ発見して除去したが、その折に居場所をなくした蜂たちが緊急避難を試みるもここで息絶えたのかも知れない。「殺生すべからず」を家訓にしているわけではないものの、見えない針がチクリ心臓をかすめる。

*******

全国学力テスト(学力・学習状況調査)の問題点二つ

◆昨日の記事の全国学力テストについて言い落としたこと2つ――

1.一つは、調査は、民間企業が行っている、ということだ。
個人情報の漏洩があったことの反省から、受検者は番号で表示し、個人を特定できるデータは業者に渡らないやり方に変わったようだが、問題と解答状況に関する全国の小中学生のデータが毎年、業者に蓄積されて行く。
すなわち民間業者はビッグデータを入手して行く仕組みだ。

それは何を意味するのか。
教育産業があってこその学校、という体制が築かれて行く、ということだ。

「学力テスト対策」と銘打った出版物も、教員への研修も主導権は民間が握る、ということである。直接「学力テスト対策講座」と銘打たなくても、「カリキュラムマネジメント力養成研修」など、通りの良いネーミングはいくらでもひねり出せる。

これは学校・教員をターゲットにしたものだが、子どもたち自身が最終ターゲットであることは言うまでもない。

現在、学力調査の成績は上の学校へ進学する際の選考材料には用いない、とされている。
しかし、現在、文科省は、児童・生徒の学習履歴をデータとして記録し、その人間の「学びのパスポート」として進学・就職、さらにその先々までも携行させよう、という考えを打ち出し、それに向けた事業を始めさせている。

すでに「classi」(ベネッセとソフトバンクによる教育事業会社)など、タブレット端末でクラウドサービスを利用するICT活用の取り組みが始まっているが、その将来形は個々の進路に直結させることだろう。教育産業が主で学校は従、極論すれば学校は要らなくなる、というのが最終形かも知れない。

プロジェクトの海外展開も視野にあるので、コンテンツとしての教材、学習法(教授法)および事業のノウハウ全体が商品と同様に輸出産業となる(それは既に始まっているようだ)。

そのために学校が、なかんずく子どもたちが毎年動員・奉仕させられて行く、ということで果たして良いのか、という問題である。

2.次に学力テストに際して行われるアンケート調査(質問紙調査)について。

子どもたちに対しては学習意欲や自己肯定感、地域への関心(2017年は保護者が学校の行事や授業参観に来るか、という質問まであった)などについて質問し、学校側にもそれらを促す取り組みを進めたか訊ね、クロス集計して学力調査との相関を調べているものだ。

例えば今年2018年の児童生徒に対する「規範意識,自己有用感」の質問は下の5つ。

・自分には,よいところがあると思いますか
・先生は,あなたのよいところを認めてくれていると思いますか
・学校のきまり〔規則〕を守っていますか
・いじめは,どんな理由があってもいけないことだと思いますか
・人の役に立つ人間になりたいと思いますか


3つ目の学校のきまりに対応する、学校側への質問は下記のようになっている。

《調査対象学年の児童生徒に対して,前年度までに,学習規律(私語をしない,話をしている人の方を向いて聞く,聞き手に向かって話をする,授業開始のチャイムを守るなど)の維持を徹底しましたか

これに対するクロス集計分析は

《調査対象学年の児童生徒に対して,前年度までに,学習規律(私語をしない,話をしている人の方を向いて聞く,聞き手に向かって話をする,授業開始のチャイムを守るなど)の維持を徹底した」と回答している学校の方が,教科の平均正答率が高い傾向が見られる。》
というものだ。
これなら何も訊くまでもない。落ち着いた環境が学習の定着を確実にするであろうことはふつうに予測できるし、子どもたちや教師も経験から知っているはずだからである。分かりきった結論を書くために全国すべての公立校小6・中3と学校に対して敢えて訊くのは別の意図がある、と考えねばならない。

この質問は2017年も児童生徒・学校の双方に出された。
毎年実施の質問をする本当の狙いは、こういうことだろう――

子どもたちに対して、《学校のきまり〔規則〕を守る人は学力が高い》《規則を守らない人は学力が低い》⇒ 《学力が低い人は規則も守らない》
これを徹底的に叩き込む、つまり、そういうことだ。「学力が低い者は規則も守らない、ダメなヤツだ。」だということを「絶対的真理」として意識に植え付けること。洗脳と言って良い


「高い・低い」を決めるモノサシは何か?大人たちが―自治体の首長も教育長も校長、教職員も例外なく―一喜一憂する平均正答率だ。他と比べてどうだったか、という相対評価である。
しかしこれは、旧い学力観であり、少なくとも新学習指導要領が掲げる新しい学力観では全くない。

◆クロス集計分析は教師たちに対しても全く同じ洗脳を行う。
学習規律の維持を徹底すれば正答率が上がる=規律の維持を徹底させないと正答率は下がる、という自動機械的な思考に馴れさせる意図としか思われない。

質問に「徹底」という言葉が昨年も今年もためらいなく使われていることに注意したい。
例外を認めてはいけない、と周知徹底することが重要だと考えられているのだ。

昨日の記事で触れた福井の中学校の、担任・副担任がうち揃って男子生徒を容赦なく「叱責」、罵倒したことの原因がここにある。

規律の維持で正答率をアップさせる。そのように結果を出せばボーナスや人事上の評価を上げる、そう考える大阪市長の発想が間違っていることは明らかだろう。
もしそれを強行すれば、学力テストを受ける前の年=小学校5年生と中学2年生の担任の引き受け手は大幅に減るだろう。……いや、敢えてその学年を持とうとヤル気満々の者も、教員の中には居るか……しかし、そのように「意欲的」な教師こそは規律の維持を徹底して貫くことに情熱を傾けるだろう。ゼロ・トレランス路線をひた走ることになる(福井の死に追いやられた生徒が中2だったことを思い出そう)。

大阪のようなやり方を本当にやったら、もはや教職は魅力ある仕事と思えなくなる。教員採用試験場には閑古鳥が鳴くだろう。

◆他の質問――「友達との約束を守っていますか」「人の役に立つ人間になりたいと思いますか」――これらも、学力調査との相関関係を強調するために動員される設問だ。
「約束を守る」こと・「人の役に立つ」ことがプラスの価値である以上、これに異議を述べない心的態度を「徹底」させることが重要あり、約束守れなかったり、人の足を引っ張ったりすることは排除されて当然だとみなされる。
しかし、人間は、約束を破ってしまったり、相手が好ましく思わない振る舞いに及んでしまったりすることがある。わざとそうするのではなく、本人の責に帰すことができない場合もしばしばある。そうしてその時に味わった挫折、葛藤や懊悩が、のちに意味を持って来るという経験もよく経験することだ。
それだけじゃない。一見アマノジャクだったり、常識外れに見えるヤツが、誰も気づかなかったことを見出したり、立ちふさがる壁を打ち破ってくれることは人類史上しばしばあったのではないか?
質問紙が示唆する人間像はそうした未知への可能性への期待をワザワザ葬り去っているとしか思えない。

◆学校への質問の中には下のようなものもある。

《調査対象学年の児童生徒に対して,前年度までに,学校生活の中で,児童生徒一人一人のよい点や可能性を見付け評価する(褒めるなど)取組をどの程度行いましたか》

こちらには「徹底」という文字はない。
「徹底」するには及ばない、ということか。
だが、子どもたちの良い点を見付けることこそ実は難しく、「褒める」ことでこちらの驚きや喜びを表現して伝えることはさらに難しい。また、褒めることは「学習規律の維持を徹底」する姿勢としばしば対立し、教師に葛藤と苦悩をもたらすこともまたよくあることだろう。
そうした事情に頓着せず、まるで素知らぬ風に「どの程度行いましたか」と、質問して来る。
ユルイ質問と言うべきか、あるいは無神経な質問と言うべきか。

*******

★国立教育政策研究所の
1.「2018(平成30)年度 全国学力・学習状況調査 報告書」は下から閲覧・ダウンロード
http://www.nier.go.jp/18chousakekkahoukoku/report/question/

2.「質問紙調査の結果」の「概要」は
http://www.nier.go.jp/18chousakekkahoukoku/18summary.pdf

3.「2018(平成30)年度全国学力・学習状況調査 質問紙調査報告書」(全体)は
http://www.nier.go.jp/18chousakekkahoukoku/report/data/18qn.pdf

4.「質問紙調査の結果(1)質問紙と学力のクロス分析及び 質問紙間のクロス分析」は
http://www.nier.go.jp/18chousakekkahoukoku/report/data/18qn_02.pdf


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