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色のひとつ足らぬ虹を[2018年04月28日(Sat)]

DSCN6581.JPG
早くもハスの花が咲いていた。藤沢市白旗の遊水地で。

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商 人   谷川 雁

おれは大地の商人になろう
きのこを売ろう あくまでにがい茶を
色のひとつ足らぬ虹を

夕暮れにむずがゆくなる草を
わびしいたてがみを ひずめの青を
蜘蛛の巣を そいつらみんなで

狂つた麦を買おう
古びておゝきな共和国をひとつ
それがおれの不幸の全部なら

つめたい時間を荷造りしろ
ひかりは桝にいれるのだ

さて おれの帳面は森にある
岩陰にらんぼうな数字が死んでいて

なんとまあ下界いちめんの贋金は
この真昼にも錆びやすいことだ

   詩集『大地の商人』(1954年)所収

三木卓はこの詩について次のように書いている。

詩人としての自己決定をしてみせた詩といっていいだろうが、「色のひとつ足りない虹を売ろう」などという言い方には泣かせるものがある。この詩は新しい世界を自分たちのものとする気持で書かれているのに、売るものも買うものもみんな欠陥だらけのしろものなのだ。欠陥のないものでこの世界を構築し直すことなんかできない、といっているのだと思う。そうしてそう思いながら今見直せば、気になるのは〈おれの帳面は森にある 岩陰にらんぼうな数学が死んでいて〉という二行である。
(三木卓「わが青春の詩人たち」(岩波書店、2002年)p.177)

◆「色のひとつ足りない虹」ということばが読む者を一気に摑んで離さない。
ここに「泣かせるものがある」と感じる三木卓には、戦後を生きる志操と発する言葉との間に余分なものを紛れ込ませない谷川の生き方への共感と畏敬がある。

大地にあるものはことごとく「欠陥」だらけだが、それらによって「狂った麦」を買い「おゝきな共和国」を買うのだという。「麦」は大地に根を張り何万倍にも殖えてゆくもの、ということだろう。それが「狂った麦」である、というのは世間的な価値観とは無縁で、損得など全く分別の外にあるからだ。

この「商人」は純粋にものとものの交換をなりわいとする者であって、もうけを我がものにするようなことは決してしない。収奪して私腹を肥やすだけの者たちは下界に数え切れないほどいるが、かれらがせっせと貯めこんでいるのは、昼の光を浴びても少しも輝くことのない「贋金」に過ぎないのだと。

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★関連記事
柳美里と谷川雁 2017年11月20日】
http://blog.canpan.info/poepoesongs/archive/687


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