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小笠原眞の詩[2018年01月30日(Tue)]

父は身一つで    小笠原眞


父は亡くなる数年前から
少しずつ身辺整理をしだした

もともと整理整頓の
得意な父ではなかったが
コツコツと身の回りのものを棄てていった
書籍から書類そして親書まで
思い出までもどんどんと棄てていった

生地の切れ端の一片でさえ
棄てることのできなかった母とは対照的に
鮮やかに気持ちがよいくらいに棄てていった

それは諦念なのだろうか
悟りなのだろうか
未練などないのだろうか

亡くなる一か月前には
もう着ることも無いからと
今まで着ていたコートや背広やら
なんとベルトまで棄て始めたのだ

きっと
身一つで
旅立とうと思ったのだろう

父は
どんどん生まれたばかりの
何も持たない人に戻ろうとしている
言葉のない世界に戻ろうとしている

あの世に行ったとき
それじゃ
あんまりかわいそうだと
妻は
棺桶に入れる品々を
父に確認しだした

時計 父は首を横に振る
文庫本 父は首を縦に振る
薬 父は首を横に振る
眼鏡 父は首を縦に振る
万年筆 父は首を横に振る
入れ歯 父は首を縦に振る

父は
ゆっくりと首を振る

どうやら
妻の声は聞こえるらしい
どうやら
あの世でも
好きな読書は続けたいのだ


  小笠原眞詩集『父の配慮』ふらんす堂、2017年

◆連れ合いに先立たれてから16 年、息子夫婦と暮らして来た父の旅支度である。
詩集には、父の生涯、青春時代、家族との日常が飾らないことばで綴られる。

◆詩人・小笠原眞(まこと)(1956〜)は医者を本業として十和田市に住む。
「哀しい眸」という詩は、若かりし日、大出血を繰り返し死を覚悟の苦しみの中でほほえみを見せて手を合わせた患者さんの話。必死の止血で助けたのだが、その時の患者さんの哀しそうな眸が忘れられないという詩である。一週間の延命を行ったことが果たして患者自身にとって良かったことなのか。30年後も思い出して自問するやわらかな心と人間をみつめるあたたかさとは不可分のもののようだ。

小笠原眞父の配慮.jpg

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