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畠山千代子「静かなる海へ」[2018年01月14日(Sun)]

DSCN5213.JPG
寒さを更新する日々。土手の水たまりにも薄ら氷が。

*******

◆畠山千代子「隻手への挽歌」より、魂の自由を求める詩を。

静かなる海へ  畠山千代子

はるばると
何を求めて私が来たか?
海よ!
お前の平和は理解力を失つて居るらしい
私の心とは
あまりにも不調和な面だ。
海よ! ほんとに
私の生活を考えて見るがよい
日いつぱい立つてもまばたきすら禁じられ
油の流れの様な
しづかな、重い、苦しさ。
死の苦痛が、
バネの様に身を突き飛ばすか、
思ひがけない運命の開放令が
直立止め! とどなつて来るか
何でもよい、
不幸でも
幸福でも
只、身動き一つ許されないのだ。

海よ!
私はお前のいかりを借りに来たのだ。
社会は私に
こころよい狂気をゆるさず
生活の縷網(るもう)
打算を放擲する事を禁ずるのだ。
家族も、友人も、自分すらも
此の町、あの町と
朝陽をかぞへ夕陽を追ひゆく
ボヘミアンの旅を許さないのだ、
そして、私は、
ごむ風船の様に
胸一ぱいに張り切つた思ひを
ゴムの外皮で閉ざして
破裂か 開放か、
社曾に對(むか)つて
いづれかを待ちくたびれて居るのだ。
先鋭なる刃があらうか?
穴をあけて貰いたいのだ、
熱情の炎火があらば
やきつくされたいのだ。

海よ!
お前には自由があるではないか
なぜそんなに黙つて
お前までがそんな顔をして居るのか、
いかりの聲をあげないのか
狂はないのか?
泣かないのか?
私を呑み込んでくれないのか?

海よ!
それとも私とお前とは
こんなにも一つなのであらうか、
その色は
(じつ)に進退を知らぬ
運命の色ではないか、
だが海よ!
私の運命であつて呉れるな
ただ、魂の
自由な表現であつて呉れ
怒涛と、
狂嵐と、
慟哭と、
神秘と、
そして
永遠と。

 (『地上楽園』1932年十月号初出)
*縷網…細かな網の目のように身の自由を奪うもの
*******

◆掲載誌『地上楽園』は、民衆派の詩人・白鳥省吾(しらとりせいご。1890-1973)が発行した詩誌(1926〜38年)。白鳥もまた宮城県出身の詩人である。

◆「直立」を強いるものに抗い自由を求める熱情が「私」という「ごむ風船」を膨れあがらせている。

*福島大学、高島由貴・准教授の「畠山千代子関連資料の総合的研究」(福島大学研究年報第11号に掲載の研究概要。同年報p.95〜97。2016年1月)によれば、『地上楽園』に掲載された畠山千代子の詩作品が8編発見されたことが報告されている。
1938年までのそれらの作品を、戦前の女性表現者として、および同時代の世界潮流の中で読み解くことが必要だ。
 
福島大学研究年報第11号https://www.lib.fukushima-u.ac.jp/nenpo/issue/no11/03_kenkyuseika.pdf


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