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2017年の〆[2017年12月31日(Sun)]

◆今年も〆の日を迎えた。恒例の境川クリーンアッププロジェクト(散歩がてらのゴミ拾い)の集計報告から。
2017年元旦から大晦日まで、ペットボトル773、空き缶1405、ビン71の合計2249本を回収した。
一日平均6.2本。その他のゴミも極力拾い、体感総重量はおよそ106kg(手応えに基づく極めて主観的な重さ。ただし8年の経験に裏付けられてさほど外れていない確信がなくはない)。
2000本を超えたのは初年度の2010年(この年は4月3日からスタートした)以来で、二度目の大台達成で慶賀の至り。ただし、そのころと違って現在は土手を水面近くまで降りて回収したりはしない(ひとえに原発事故後の土砂中の放射線量低からざりしを理由とする)。
その分、地元を回る範囲を広げ、自転車で徘徊する折に遭遇した獲物も多い。

*******

◆今年出た詩集で読むことができたものから幾つか紹介する。

藤井貞和『美しい小弓を持って』(思潮社、2017年7月)より――

藤井美しい小弓+憲法詩歌集_0001.jpg


のたうつ白馬 ―― 回文詩3  藤井貞和

震源は
震源は
のたうつ白馬

爆破のあとの
あしたは来るか?
ついに爆発
しか(=確)と
かだましく 神か
神隠し まだかと

過失?
白馬にいつ?
軽く果たし
あ(=足) のと(=音)

爆発 うたの
反原子
半減し

*かだまし(姧し)…心がねじけている、怠慢である

◆「回文」とは「たけやぶやけた」のように上から読んでも下から読んでも同じ音になるもの。
この作品では1行目「震源は」(しんげんは)をひっくり返して最終行「半減し」(はんげんし)と変貌させている。2行目以降も同様。
次の作品も同じ要領である。


この国家よ ―― 回文詩5

暗い来歴に
かなしいよ
人災よ
この国家よ
炉の震源は
遠のくより
箴言せよ
字はまだ
スクラム(=緊急停止)
停止や
試間、模擬、意図
いしだたみが快楽

規制の虜(=Regulatory Capture)
ほとんど愚昧
電源、この
喪失し
うその根源で、いま
愚鈍と
誇りとの遺跡
暗い鏡

ただしい問い、疑問
もしや、しいて
村、薬玉は
除染
原子力の音
反原子の
炉よ
かつ、この
今宵、惨事よ
石中に
きれい、磊落


◆1行目「暗い来歴(に)」(くらいらいれき)を逆さにして最終行は「きれい磊落」(きれいらいらく)と変貌させている。
なお、回文としての折り返し点は、タイトルを除いて全31行の詩行から構成されるこの詩の真ん中、すなわち16行目の「喪失し」であることが見てとれるだろう(単音で指摘すれば「喪失」の「つ」)。
単に回文という言葉遊びの折り返し地点というなかれ。原発の過酷事故をモチーフとするこの詩において中心を成すのは、かけがえのないものを喪失した感情であること、そうしてその感情を境に反転させられたこの世界を音で表現したのである。

意味の上ではたとえば「喪失し」の前行は「電源」であり、次行は「うその根源」。すなわち事故後でさえ基幹電力と位置づけることをやめない「原子力の平和利用」という国家の大ウソへの怒りが諧謔の衣裳をまとっているわけだ。

◆同様に最初の回文詩「のたうつ白馬」の折り返し点を見ると、16行ある詩行の折り返し点は8行目と9行目の間にある。
すなわち「かだましく 神か」を反行させて「神隠し まだか(と)」と変貌させていることが分かる。そうしてこの部分も実は感情が渦巻いて中心を成している。神にあらざるものが神を僭称することへの怒りである。
「かだまし(姧し)」という古語は「心がねじけている、怠慢である」という意味だが、「ねじけた心」ほど「神」から遠いものはないはずであるところ、この二つを続けて奇態を表現する。同時にもう一つの「怠慢」の意味からの連想によって「過失?」と繰り出して問い糺して行くのである。

◆藤井貞和の詩をもう一篇。昨年夏の津久井やまゆり園の悲劇を詠んだ作品。

悲し(律詩)

人のさがはここに行きつくのか、家族の心痛を知らず。
ことばよ、空しく駆け去って応えはどこにもない。
無惨な犯行の場に、いまきみを抱く涙 数行(すうこう)
現代の暗部に遺されて、われらであることを遂げない。
十九人を喪うわれら、何を愛(かな)しと言おう。
はくらくてん(=白楽天) よ、あなたにはもはやうたう理由がない。
心豊かでありたいのに、残忍な非行に向き合い、
地底に声を知るもののかず、ついになくなる 視界内。
(反辞)
われらとは、現代に律詩とは。 立ち向かうとは。


◆一年半が過ぎて園と入園者たちの今後については一定の方向が打ち出されたものの、直訴の手紙への対応を誤った公的な立場の人々の責任については何ら反省がないままである。
「われらであることを遂げない」世界では「ことば」は応える者を得られないまま飛散するしかない。しまいには「地底に声を知るもの」が一人として存在しなくなってしまう。亡き人が不在であるだけでなく、そのことばを知る人々もまた不在の世界である。
加害者は「意思の疎通ができない人間が生きてても意味がない」と考えていた。果たしてそうか?そう決めつけるところに私たちもまた立っていないだろうか?


*******

◆2017年5月3日に出た『日本国憲法の理念を語り継ぐ詩歌集』(鈴木比佐雄、佐相憲一・編。コールサック社)から2篇。


なんでじゃ なんでじゃ  佐々木淑子

なんでじゃ なんでじゃ
なんでわしらが どかねばならぬ
踏むな 汚すな
その下にゃ されこうべが埋まっとるぞ
(おばあたちが引きずられようとされる)
「年寄りに手を出すな おばあはこれでも
レディじゃど」
なんでじゃ なんでじゃ
なんでわしらが 泣かねばならぬ
軍靴を脱げよ
裸足で大地にぬかづけよ

なんでじゃ なんでじゃ
なんでわしらが どかねばならぬ
踏むな 汚すな
その下にゃ ウチナーの神が住んどるぞ
なんでじゃ なんでじゃ
なんでじゃ なんでじゃ

(オペラ『鳳の花蔓』より。演習場入り口でのおじいおばあの命がけの攻防の場面)

◆作者は詩人にして脚本家。

◆最後に若い世代の詩を一つ。2018年の世界がこうしたしなやかでまともなことばであふれますように。

*******

スモールワールド  井上摩耶

ねぇ、世界は小さいって言うけれど本当かもね
願えば叶うって言うけれど本当かもね
世界は繋がっていて
みんなの願いが叶っていくのかもね

誰かが誰かの願いを叶えていて
祈りを 悲しみを 喜びを共にしていて
グローバリゼーションっていうけれど
その言葉の意味より 奥深く心で
シンクロしているのかもね

だから悲しみが大きいとどんどん広がってしまうよ
涙の海が出来てしまう前に
止めないとね
絶対にダメだよって
これ以上の犠牲は哀しいよって
祈ることをしないとね  心からさ


藤井美しい小弓+憲法詩歌集_0003.jpg



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