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小笠原東陽と耕余塾のその後[2017年12月04日(Mon)]

小笠原東陽と耕余塾のその後

◆新塾舎を建設し中学として新たな出発をした耕余塾は、学齢を過ぎた者を主な対象とした。当時としては県内唯一の中等教育機関として明治12年には103人もの塾生を擁した。うち、96人が寄宿生徒であったというから、近郷のみならず、各地の子弟が集ったと言える。明治21年からは慶應義塾や同志社出身の新進の教師によって洋学も教授した。
1887(明治20)年に小笠原東陽が没したのちは娘婿の松岡利紀が継ぎ、耕余義塾と名を改めた。
入塾者を12歳以上の高等小第二学級以上の学力のある者とし、英語教育に特色を打ち出した。
先述した吉田茂(1878-1967)が耕余義塾に学んだのは1889〜94年の5年間である。

閉塾

◆しかし1897(明治30)年、暴風雨によって耕余義塾の建物はすべて倒壊して、3年後には閉塾のやむなきに至った。
1897年には県立中学校が設立された。それときびすを接するように耕余義塾が歴史を閉じる。その使命が終わりを迎えたということであろう。
*1897年に神中(じんちゅう)と呼ばれた最初の県立中学(現在の希望ヶ丘高校)がスタート、以後10年ほどで第四中学校(現在の県立横須賀高校)までが開校、高等女学校も1901(明治34)年に県立高等女学校(現在の横浜平沼高校)が開校した。

◆耕余義塾のような個性ある私立学校が閉鎖されていった理由として「神奈川県の百年」(山川出版、1984年)は、「教育の画一化と国家統制の強化」を挙げる。
教育勅語(1890)による儒教道徳・国家主義の浸透、日清・日露戦争を進める国家を扶翼するための愛国心を鼓吹する国家によって、出征兵士・帰還兵士の歓送迎や戦死者の葬儀参列などに子どもたちは動員されて行った。

◆国家主義教育は、視学官による小学校訓導(先生たち)への指導・監督、国定教科書の制度化(1906年)によって徹底が図られていった。
横浜に多かったキリスト教学校への圧迫も強まり、1999年の私立学校令で小・中・高女での宗教教育を禁止したため、キリスト教に基づく教育を継続するためには各種学校として届け出ることを余儀なくされて行った。
その他の私立学校で廃校となった所も少なくなかったのである。

*以上、児玉幸多編「藤沢 わがまちのあゆみ」(藤沢市、藤沢市教委、1983年)、高村直助ほか編「神奈川県の百年」(県民100年史14)(山川出版、1984年)によった。

◆地元の古老に聴き取りした「こんな時代もありました」という本がある。
その中に「耕余塾と東陽先生」という一篇がある。明治生まれの植田万造氏(明治33年生まれ)と三觜臨作氏(明治40年生まれ―三觜八郎右衛門の一族の方であろうか)のお二人の話をまとめたもの。羽鳥の御霊神社の扁額が吉田茂の書であるという話を紹介したのちに東陽について、こう語っている。

御霊神社には東陽先生のお書きになった神社の幟(のぼり)もあります。大きな幟で「五穀豊穣」と書いてあるんですが、現在は新しい幟をつくってそれを使用し、東陽先生の幟は神社の宝物としてしまってあります。東陽先生は書道も優れており、半漁という号をもっていて、書にはよく半漁と署名されています。なんでも先生はつりが好きだったということですよ。

◆釣り好きの東陽について色川大吉は次のように書いている。

すでに時代を超越した人のように、ひまがあれば釣り竿をかついで、相模の海に出ていた。この先生の趣味は年ごとにひどくなり、雨の日も風の日も、秋も冬も、休日というと小舟をあやつって出るという、つきつめたものに変わって行った。
そうした仙人のような孤独な先生の後ろ姿をふりかえりつつ、若い門弟たちは、村の塾舎をあとに羽ばたいていったのである。

「日本の歴史 21 近代国家の出発」(中央公論、1966年)

◆「つきつめたもの」とは、果たして何であったのだろう。

*******
こんな時代もありました.jpg
藤沢グリーンライオンズクラブ編「こんな時代もありました 語り継がれていく古老の話編1」
(藤沢グリーンライオンズクラブ発行、1985年)

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