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加古さとしの悔悟[2017年11月30日(Thu)]
「加古里子 絵本作家の道」(福音館書店、1999年)のあとがきで加古は3つの重大な過誤をおかしたと告白している。

その第一は少年時代、軍人を志し一途に心身を鍛え、勉学にはげんだという誤りです。家庭の状況や時代の流れに託するのは、卑怯暗愚の至りで、幸か不幸か近視が進み、受検もできず、軍人の学校に入学できず敗戦となったため、禍根を拡大しないですんだものの、世界を見る力のなさと勉強不足は、痛烈な反省と慚愧となって残りました。時おり訪れるアジア各国でのご挨拶は、まず私のこのお詫びと反省ではじまるのを常としています。

続いて以下の2点。

第二の誤りは、この第一の過ちを取り返す滅罪の計画を探り、その実現には周囲への依存はもちろん、家族に困惑をかけぬこと、換言すれば個人的秘事として処理した処理しようとしたことです。

言葉遣いはあえて荘重に武張って記しているのだが、要するに第一の過誤からの回復のために、自分がなし得る200項目の目標を文化・教育・科学・社会の分野にまたがって定めその実行を進めて来たものの、そうは問屋が卸さなかったことを思い知らされたと言うのである。即ち――

幼少の子ども達からは「これまで一度も遊んでもらった事ないもん」と家事にうとかった点をまんまと見抜かれていた上、数年前に点検したら、目標項目のまだ半分も実現していない有り様でした。達成できぬ計画を立てた無知無謀無為の過ちとなって、再び悔悟に追い立てられている所です。

第三の過ちは、戦争で死ぬべかりし生命を残してもらい、親や妻子に人としてなすべき最小事をした残余の時間をおよそ四万時間と算定した事です。
早い話が第一の誤りに二十年を使い、第二の間違った計画準備に二十五年、合計四十五年間を費やしたものの、以後二十年生きることができれば、一日八時間、年二千時間だから四万という時間が、これまで受けた社会や人々への恩返しに使えるだろうと考えたのです。

ラフだが余裕を持たせた人生の設計図を用意して、多少浪費した時間があってもそれを取り戻すようにして生きてきたつもりだったのに、その決算はどうだったかというと――

とうに四万時間は使い果たし、しかも更に十年近く延長して長生きさせてもらっているのに、微々たる事しかできていない体たらくです。これではこの先、何万時間生かしてもらっても到底駄目ではないか。すぐれた才を惜しまれながら死んでいった友人や先人に比し、ベンベンと長らえ、時間を空費している重大な誤りであるのは明白です。
(中略)
もはや老人というより化石人に近いのに、今なお青臭い迷いや追求にあけくれているのは、我ながら進歩のない限りです。


1999年、73歳の時のことばである。
それからさらに18年。
どんな感想をお持ちだろうか。

◆時間を空費したという悔悟は目標に到達させないものの存在に気づくことから生まれるのではないか。若い時期、壮年の頃と老年・化石期とでは描こうとする対象の見え方の時間の質も違う。正面からしか見えなかったものが横顔も背面も見えるようにはなる(ならない者もいるけれど)。時間の進み方も直線ではない。右往左往、時に旋回、時に引き返し、ということだって無いわけではない(ムダを恐れて脇目も振らず真っ直ぐ進む者もいるけれど)。それがために「なお青臭い迷いや追求にあけくれている」のではあるまいか。
達観や悟達に住しているヒマがないこと、それが加古里子という絵本作家の本領なのだろう。
だるまちゃんが面壁八年の動かない姿でなく、手も足も出して活発に躍っているのは自然な話である。

加古里子絵本への道-A.jpg
「加古里子 絵本への道――遊びの世界から科学の絵本へ」
福音館書店、1999年。
「何年かをかけて作る科学絵本の九割方は意味を見出だすための否定の連続みたいなものです」
など、作家ならではの金言が満載の絵本制作秘密の玉手箱。



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