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ペルソナ・ノン・グラータ[2017年10月30日(Mon)]

DSCN4096-A.jpg
稲架(はさ)がけしている田んぼを久しぶりに見た。
六会の新田地区で。

*******

北村太郎の詩集『港の人』が鎌倉の出版社から復刊された(2017年9月)。発行元の名前も「港の人」という。
詩人と親交のあった人が営む出版社のようだ。

ここの「港」とは詩人が60代の8年ほどを過ごした横浜のことだ。

今日など冷たい風が吹く日には、やました(山下)公園のイチョウ並木が登場する第5番の詩などふさわしいかもしれないと思うが、未だ10月だと思い直してその先のページを繰った。

ペルソナ・ノン・グラータ

◆第21番の詩で「ペルソナ・ノン・グラータ」という言葉に出くわした。

「ペルソナ」が「人、人格」のことだというのは和辻哲郎の「面とペルソナ」から了解できる気がするが、その後が良く分からない。「ノン」が付くので、ラジオ仏語講座をかじっているわが子に訊いてみるとイタリア語じゃないの?という心もとない返事。
結局ネットの世話になる。
〈persona non grata〉と綴る「受け入れ国にとって好ましくない外交官」の意味の外交用語で、「好ましからざる人」というのが原義(ラテン語)である。「persona grata」(好ましい外交官・人物)という言い方もあるようで、2つとも英和辞典にも載っていた。
先頃、スペインやメキシコ政府が、ミサイルや核実験を止めない北朝鮮の大使に国外退去を宣告したが、あれが「ペルソナ・ノン・グラータ」ということだ。

◆北村太郎の詩全体は次の通り。

詩集『港の人』より
〈21〉

朝の光がさしこんできても
頭のなかの
舌は
とまろうとしない

しゃべっているのはへんなことばかり

気がついたときに
目が覚める

いちばん最後にペルソナ・ノン・グラータと呟いたようで
おもわず肩をすくめてしまう
ベッドに寝たままそんなことをするのなんてちょっとおかしいが

自然にそうしてしまう
人びとの影は
ことばより先に
もうとっくに光の中に消えてしまっていて
壁は
きのうよりもずっと白い


◆「ペルソナ・ノン・グラート」とは、詩人の自分自身への認定である。
目が覚める直前の、無意識と意識のあわいのところで最後に出た呟きは、目が覚めてからも記憶に新しいので、しばらくその日の気分を領し続ける。
というより、誰が認定したのでなくても「好ましからざる存在」という烙印を自分に焼き付けて生きてゆく人間、生涯にわたり楽園追放の運命を引き受けて生きている人、と言ったらよいだろうか。
我こそは好ましい者として万人に容れられて居るところの有用な人材だと自任している脳天気とは、対極に在る人だ。

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