• もっと見る
« 記憶は死に対する部分的な勝利 | Main | 危険な未来図 »
<< 2024年03月 >>
          1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
31            
最新記事
カテゴリアーカイブ
月別アーカイブ
日別アーカイブ
モノサシに頼る・頼らない[2017年10月16日(Mon)]

児童生徒の学習評価に関するワーキンググループ

◆中教審の「児童生徒の学習評価に関するワーキンググループ」の第1回が10月16日、文科省で開かれた。
次の学習指導要領が唱導する学力観に即した学習評価のありかたや学習指導要録(子どもたちが学んだことがらを記録した公文書)の改善について具体的な議論を進め、来年秋までにまとめる。
*新しい学習指導要領は、小学校で2018年から可能なものについて先行実施がスタートし、2020年度から全面実施となる。中学校は2021年度から全面実施となる。

◆現在行われている4観点の学習評価が「知識及び技能」「思考力・判断力・表現力等」「主体的に学習に取り組む態度」という学力の3要素に即した評価(観点別学習状況評価)へと変わる。
学習指導の在り方の見直し、個に応じた指導、学校の教育活動を組織として「改善」することが目指される。そのためにPDCAサイクル(【Plan→Do→Check→Action】すなわち【計画→実施→評価→改善】)を浸透させて「指導と評価」を一体のものとして取り組むとしている。
学力の質を保証するために事業における生産管理や品質管理の手法を教育の分野にも適用させようという考え方である。「学びの質」という言い方でその向上を目指すのに異論を挟む余地はなさそうに見える。旧来の教育観を刺激していることは事実だ。ただし、品質管理に由来する考え方であることに自覚的でないと、生身の人間を製品と同等にみなす恐れがある。教科を横断した総合的な学力を伸ばし、幼児期から大学まで連続性を意識することも問題なさそうに思われるだろう。だが、人間の学びや成長には認知しがたいものが必ずあり、そこに可能性の芽も胚胎していることを忘れてしまうと、子どもたちをモノ視した管理主義に堕する。公平や客観性にこだわって精緻なモノサシを求め、「正確な評価」を実現させるためにモノサシからはみ出した部分を切り落とすことさえ生じる。さもなければあらゆる教科、あらゆる成長段階において鋭利な金串で串刺しにしかねない。議論に抜け落ちているものは何か、注意深く見ていく必要がある。

◆特別支援教育に関連して「定型発達」という用語が使われていてハッとした。
いわゆる健常者の発達を意味することは分かった。
しかし、「定型発達」という言い方には、健常者の発達段階をモノサシにして、それに達していないものを選別・排除する発想が潜んでいないか気になる。
学習指導要領の議論の中で「何ができるようになるか」という言い方がしばしば使われていた。Aという学習課題について「できる・できない」という評価が下され、それが優劣を表す評定として受けとめられる恐れがある。

石井英真委員(教育学)から出された資料に「情意領域の評価への危惧」という記述があった。
・情意に関わる部分、特に性向(ある状況において自ずと特定の思考や行動を取ってしまう傾向性や態度)や人間性といった価値規範に関わるものを評価することについては、個々人の性格やその人らしさまるごとを値踏みする全人評価につながることや、それによる価値や生き方の押しつけに陥ることが危惧される。

大事な指摘である。

DSCN3915-A.jpg
学習評価に関するワーキング・グループの市川伸一主査(左)と荒瀬克己主査代理

*******

学歴というモノサシ


石垣りんの随想からもう一箇所。

◆先日おとずれた中学三年生のクラスで、私は通算八年間学校で学んだだけなので、あなた方のほうが学歴が上なのです、というと少年少女たちは大笑いしてくれました。私が使って見せたものさしが、生徒にはおかしかったのでしょう。けれど彼らもまたそれと同じものさしで人間を計られ、評価されることがあるかもわかりません。

石垣りん「巣立った日の装い」(ちくま文庫『焰に手をかざして』所収。初出は79年3月「共同通信」)


この記事のURL
https://blog.canpan.info/poepoesongs/archive/653
トラックバック
※トラックバックの受付は終了しました
 
コメントする
コメント
検索
検索語句
最新コメント
タグクラウド
プロフィール

岡本清弘さんの画像
https://blog.canpan.info/poepoesongs/index1_0.rdf
https://blog.canpan.info/poepoesongs/index2_0.xml