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尹東柱〈星をうたう心で〉[2016年10月21日(Fri)]

詩人・尹東柱

◆尹東柱(ユン・ドンジュ 1917〜45)の詩を初めて日本語で出した伊吹郷の訳による『空と風と星と詩』に古本屋で出会った。

尹東柱空と風と〜伊吹郷訳_0002-A.jpg
 1984年初版、影書房。手に入ったのは2010年の第2版第4刷。

◆扉を開けると延禧(ヨンヒ)専門学校に在学していた23歳頃の写真がある。
おだやかな表情だ。
知性と感受性が深い所で結び合って生きている人であることを感じさせる。
なつかしささえ感じさせるポートレートである。

尹東柱空と風と〜伊吹郷訳_0001-A.jpg

撮影者とどんな言葉をやりとりしただろうか、と想像したくなる写真でもある。

*******

◆最初に、詩集のモチーフ「空・風・星」をちりばめた序詩がある。

 序 詩  一九四一・一一・二〇

死ぬ日まで空を仰ぎ
一点の恥辱(はじ)なきことを、
葉あいにそよぐ風にも
わたしは心痛んだ。
星をうたう心で
生きとし生けるものをいとおしまねば
そしてわたしに与えられた道を
歩みゆかねば。

今宵も星が風にふきさらされる。


◆「星をうたう心で」とはどのような心をいうのだろうか。

この序詩が書かれる少し前、1941.11.5の日付けを持つ「星をかぞえる夜」という詩は次のようにはじまる。

季節の移りゆく空は
いま 秋たけなわです。

わたしはなんの憂愁(うれい)もなく
秋の星々をひとつ残らずかぞえられそうです。

胸に ひとつ ふたつと 刻まれる星を
今すべてかぞえきれないのは
すぐに朝がくるからで、
明日の夜が残っているからで、
まだわたしの青春が終っていないからです。


目や耳に飛び込んでくるすべてのものが、それぞれの光を放って若い自分の心に刻み込まれる。
それは、天や宇宙といった観念で世界を観照することではない。
星をひとつかぞえることで自分もひとつ輝きを増して豊かになるのを感じているのだ。
それをしっかりと刻みつけるのは言葉のはたらきだ。

詩は次のように続く。

星ひとつに 追憶と
星ひとつに 愛と
星ひとつに 寂しさと
星ひとつに 憧れと
星ひとつに 詩と
星ひとつに 母さん、母さん、

母さん、わたしは、星ひとつに美しい言葉をひとつずつ唱えてみます。


さらに「わたし」は星たちのひとつひとつを、小学校で机を並べた児らの名、「佩(ペー)、鏡(キョン)、玉(オク)といった異国の少女たちの名と、すでにみどり児の母となった少女たちの名、貧しい隣人たちの名と、鳩や子犬といった生きものたちの名、フランシス・ジャム、ライナー・マリア・リルケといった詩人の名で呼んでいく(これらの詩人は、はるかな星のようにあまりにも遠くにいる人々であるのだが)。

とすれば、ひとつひとつの星は、「わたし」がこれまで出会ったり、人づてに聞いたり本を読んだりして胸に飛び込んで来た光のひとつひとつであるということ、そうしてそれらが「わたし」にもたらした感情が今も豊かに存在していることをいとおしんで生かすこと、それが「星をかぞえる」ということだ。
「星をうたう」とはそれを言葉にして彼らの光を現前させることにほかならない。
そうした光との出会いはこの先も次々と生まれて行くだろう。

それら生きとし生けるものの光を「いとおしむ」こと=言葉によってその星たちの名を呼ぶこと、それが自分の歩む道なのだ、と詩人は思い定めた。

*******

【参照】
◆拙ブログの過去の記事:
詩人・尹東柱 没後70年2015年02月16日
http://blog.canpan.info/poepoesongs/archive/105


この記事のURL
http://blog.canpan.info/poepoesongs/archive/363
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