CANPAN ブログ検索
Loading
  • もっと見る
« ボロ切れの苛立ち | Main | 縄なひ機 »
<< 2019年11月 >>
          1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
最新記事
カテゴリアーカイブ
月別アーカイブ
日別アーカイブ
堀口大學〈夕ぐれの時はよい時〉[2019年09月28日(Sat)]

DSCF0001-A.jpg

◆夕焼けの美しい季節となった。
歩みはゆったりとなり息も深く静かになる時間。
「夕ぐれの時はよい時」というリフレインが印象的な堀口大學の詩が似つかわしい。


夕ぐれの時はよい時  堀口大學

夕ぐれの時はよい時、
かぎりなくやさしいひと時。

それは季節にかかはらぬ、
冬なれば煖炉(だんろ)のかたはら、
夏なれば大樹の木(こ)かげ、
それはいつも神秘に満ち、
それはいつも人の心を誘ふ、
それは人の心が、
ときに、しばしば、
静寂を愛することを
知つてゐるものの様に、
小声にささやき、小声にかたる……

夕ぐれの時はよい時、
かぎりなくやさしいひと時。

若さににほふ人々の為(た)めには、
それは愛撫に満ちたひと時、
それはやさしさに溢(あふ)れたひと時、
それは希望でいつぱいなひと時、
また青春の夢とほく
失ひはてた人々の為めには、
それはやさしい思ひ出のひと時、
それは過ぎ去つた夢の酩酊(めいてい)
それは今日の心には痛いけれど
しかも全く忘れかねた
その上(かみ)の日のなつかしい移り香(が)

夕ぐれの時はよい時、
かぎりなくやさしいひと時。

夕ぐれのこの憂鬱は何所(どこ)から来るのだらうか?
だれもそれを知らぬ!
(おお! だれが何を知つてゐるものか?)
それは夜とともに密度を増し、
人をより強き夢幻へみちびく……

夕ぐれの時はよい時、
かぎりなくやさしいひと時。

夕ぐれ時、
自然は人に安息をすすめる様だ。
風は落ち、
ものの響は絶え、
人は花の呼吸をきき得るやうな気がする、
今まで風にゆられてゐた草の葉も
たちまちに静まりかへり、
小鳥は翼の間に頭(かうべ)をうづめる……

夕ぐれの時はよい時、
かぎりなくやさしいひと時。



◆ゆったりと夜の濃い闇に包まれることが約束されているのなら、それは憂鬱を伴いながらも安息にほかならない。人の生涯もまた同様であるならば時に身を任せ、悠揚と玩味するにしくはなし、と納得させられる。

*大學の第一詩集『月光とピエロ』(1919年)の一篇。
当時、大學は外交官の父に従ってブラジルにいた。青春期の海外滞在の中でも最も長いあしかけ5年をブラジルで暮らした。
**中央公論社『日本の詩歌 17』(1968年)によった。




この記事のURL
http://blog.canpan.info/poepoesongs/archive/1359
トラックバック
※トラックバックの受付は終了しました
 
コメントする
コメント
検索
検索語句
最新コメント
根来珠青
銃剣道 歴史に目をふさぐおぞましさ (03/29) 当ブログ管理人
ジャーナリスト・安田純平さん解放との報【追記】 (10/26) 3億円で買える銃と弾
ジャーナリスト・安田純平さん解放との報【追記】 (10/25) マキシミリアナ・マリア・コルベ
コルベ神父のこと その2 (06/23)
若き音楽家リュカ・ドウバルグ (06/09)
タグクラウド
プロフィール

岡本清弘さんの画像
http://blog.canpan.info/poepoesongs/index1_0.rdf
http://blog.canpan.info/poepoesongs/index2_0.xml