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「朴」になじめなかった「僕」[2019年08月19日(Mon)]

DSCN1456ミント.JPG
ミントらしい。カメムシの匂い除けに効果ありというが、なぜかそのカメムシが幾匹も白い花に群がっていた。香を慕う虫も好き好き、ということか。

*******

大邱(テグ)    新井豊吉

小学生の頃 年一回開かれる基地祭りの
ホットドッグが大好きだった
おいしいキムチの作り方をスクラップしたのは
職についてからだ
しらふのあなたは
大きくなったら韓国から嫁さんをもらえが
口癖だった
二組の久美子さんの顔が浮かび
気持ちが沈んだ
日本人として生きていたので
夜間の朝鮮語学校は三日でやめた
呪文のようにつぶやいた
アボジ ヂムシセヨ
意味は定かでない
あなたがそういえばお父さんは飲むのをやめて
寝てくれると教えてくれた二度目の母
無頼派小説にあこがれ
高校生の頃短編をかきはじめたが
いまだにハングルは読めないでいる
はじめて持った外国人登録手帳は
スパイ映画のようで人に見せてはいけないと思った
日本育英会の奨学金はもらえなかった
成績より国籍が問題だ
行く気のなかった成人式に
招待状はこなかった
町の写真館で背広を着て
そっくりかえって撮った笑える写真
選挙には行きたかったが
選挙権はこなかった
役所でしか使わない朴に僕はなじめなかった
大学構内で指紋押捺の反対運動をする
日本人の前を太宰とシェイクスピアを抱えて
素通りした
公務員は受験資格がなく塾で働いた
面倒みていた後輩は飲み屋で
朝鮮人なら軽蔑します
小料理屋の息子である彼は朝鮮人の酔客に
いじめられるおふくろを視ていたらしい
優秀な彼はその男と私が他人であることに
気づかなかった
待ち焦がれたように日本人になった
公務員になり子供にも恵まれた
仲間になることを切望していたのに
遺失物係に届けたいような寂寥
落としたものは案外大切なものだったのか
他界したあなたに手紙をだしはじめる
慶尚北道大邱府南山町一六二
私が知っているのは本籍とあなたの名前だけ
大邱は今では大都市らしい
役所から返事はこない
同封した切手返してほしいな
屋台で知合った韓国人ビジネスマンに託してみる
本籍と名前だけでは親戚は探せなかったとのこと
ありがたい探してくれたんだ
留学生に大切な写真を渡してしまった
アルバムにあった凜とした学生服の男は
あなたの兄弟かもしれませんね
衿のバッヂから学校がわかるといった君は消息不明だ
写真だけでも返してほしい
あなたの見ていた故郷の山は川は
どんなだったのだろう
あなたは子供の頃から乱暴で意気地がなくて
だまされやすかったのだろうか
年とったのか涙もろくなった
尹東柱をよみ
「長河への道」を聴き
関東大震災 朝鮮人が井戸に毒をいれたという
デマがながれたとき
暴動を起こす日本人から朝鮮人を助けた
大川さんの逸話にほろり
東北弁の少年は血に誘われ
大邱へ大邱へと近づいている


*尹東柱(ユン ドンジュ) 詩人(一九一七〜四五)
*「長河(チョンハー)への道」 韓国人系日本人歌手 新井英一の代表曲
*大川常吉 朴慶南(パク キョンナム)(一九五〇〜)作家「ポッカリ月がでましたら」より

※注は原詩のもの
★『在日コリアン詩選集』より

◆新井豊吉は1955年、青森県生まれ。
冒頭の「基地」とは三沢基地のことであろう。

冗談のころもで包みながら、在日コリアンとしての半生を振り返る詩。
日本人となってみて取り落としたものの正体を確かめようと、亡父のふるさと・大邱に思いは向かう。



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