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〈死んでたまるもんね〉[2019年08月18日(Sun)]

◆NHKが今夜放送した映画「ひろしま」(関川秀雄監督)は敗戦後まもない1953年の作品である。音楽は伊福部昭(やはり伊福部が音楽を担当した「ゴジラ」は翌1954年)。

月丘夢路が子供たちと映ったスチル写真だけは記憶にあるが、映画自体を観る機会はなかった。
被爆者自身を含む8万8千人もの広島市民がエキストラ出演し、海外での評価も高かったという映画でありながら長く封印されて来た理由の一つに映画の製作が日教組プロであったことがあるようだ。
政治の介入である。

日本政府のみならず、アメリカの意向も働いていたであろう。
米アイゼンハワー大統領が国連総会で「核の平和利用」演説を行ったのは、映画公開直後の1953年12月8日である。原爆被害の生々しい姿を人々の目から遠ざける必要があったろう。
かくて国際社会はもとより日本人自身の前からも映画「ひろしま」は姿を消されていたわけである。

◆◇◆◇◆◇◆

◆ヒロシマ・ナガサキの被爆者は日本人だけであったのではない。
日本国内に収容されていた外国人捕虜がおり、さらに多くの朝鮮半島からの人々がいた(被爆者の10人に1人は在日の人々であったとする調査がある)。
『在日コリアン詩選集』からもう一編を――


炭  趙南哲(チョ ナムチョル)

うちゃあ死にゃあせんよ
死んでたまるもんね

あのひと追っかけて慶尚北道の山奥から
広島に来たんが十八じゃけど よかったんは
三年間あのひとと暮らせたゆうくらいかね
あのひとはうちのまえの柿の木みたいに
ピカできれいに炭になってしまうし うちは
炭になりきれずに 灰だけ吸うてしもうたけんね

シアボジ(しゅうと)もシオモニ(しゅうとめ)も痛い痛いゆうて
泣いとったよ ほんま生地獄たあようゆうたもんよね
うちも立てんくらい痛かったんじゃけど
もう死んだほうがええゆうてなんべんも思うたんじゃけど
あのひとの子ども死なすわけにゃあいかんじゃないの

ようここまで生きてきたあ思うよ
シアボジは脱疽で両脚切ってずっと寝たきりで
ある日あっけなくあの世に行ってしもうたけど
シオモニは痛い痛いゆいもうてなんとか生きとってよ
女のほうがしぶといんじゃねえゆうてよう笑うんよ

灰吸うた女の体になんぼ汗水ふきだして
失対したけゆうて 一日なんぼになるいうんね
日本人の証人がおらんゆうてうちには手帳もくれんし
それで病人ばっかりの家族が生きてきたんじゃけえ
ふしぎなもんよね 神さんが生かしてくれたんかねえ

ピカがうちらの幸せをめちゃくちゃにしたんよね
うちゃあピカがほんまにうらめしい
アメリカも日本もにくったらしい
なんでよその国の戦争でうちが
こんなめにあわにゃいけんのか
いまでもわからんよ

いまさらそんなことゆうてもらちあかんしね
あのひとが帰ってくるわけでもないしね
ただね うちらの国が一つになるじゃまだけはせんでほしい

故郷にあのひとの骨の灰うめてあげるまではね
うちゃあ死にゃあせんよ
死んでたまるもんね


失対…失業対策事業。
失業者対策として公共事業等で雇用を進めたが、最低賃金をもさらに下回る労働条件であった。
手帳…被爆者手帳。申請するには3名の証人が必要など、日本人被爆者にすらいハードルが立ちはだかっていた。

森田進・佐川亜紀 編『在日コリアン詩選集』(土曜美術社出版販売、2005年)より。

趙南哲は1955年広島県生まれの詩人。



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