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〈在らされている〉[2019年07月12日(Fri)]

DSCN1231.JPG
雨に打たれてか、低く身を屈めて咲くダリアたち。
土より立ちのぼり、惜しげ無く花びらを展げてまた土に還る。

***

塔和子の「在らされる」をうたう詩ふたつ



遠くからの声   塔和子

母から母へ
  母から母へ
はるかにはるかに流れて来た私が
人の繁みの中へ
ほうり出されている
繁みの中の個として
もうどこへもつながっていないのに
どこか遠い遠いところから声がする
私は今日
次の世代へ渡すべくあらされている母性

あなたよ
あなたの父性も
その父のその父の
はるかなはるかな始祖から
あなたへ流れて来た血を受けとめてあるのか
私たちらい夫婦は子を産まず
遠くからの声を
うさぎのように耳を立てて
聞いているだけ
流れをせきとめて立つことの
重たさが
透明にしみる一瞬を


◆◇◆

つき動かされなければ   塔和子

ひとつの言葉が私の心に落した
ひとしずくの重さが
私を立ち上がらせ考えさせ歩かせ
立ち止まらせ聞き入らせ見つめさせ
休むひまなく行為させる

ひとりの人間の
血の通ったうつくしいものが
終日私をほほ笑ませ
和ませ希望にもえさせ
力をみなぎらさせ喜びにひたらせ
孤独の闇を照らしつづける

一本の花が私の手に輝くとき
大地の秘密に思いを至らせ
季節のじゅんかんの中で
咲くようにうながされた花の
のっぴきならない開花について
陽の匂い土のにおいの中で
ゆりさまされゆりさまされた
その花でなければもつことのできない
匂いについてうっとりさせる形について
思いは心を光らせる

つき動かされなければ
聞き入らず見つめず
無いに等しい平(たいら)にあるのに
つき動かすものがあれば
こんなにもはげしい私は
どんなあつい神の希いによって
在らされているのか
私は
自分がもえるとき
私をつくったものの
いとも満足げな笑いをきく


*ともに『いのちの花』より(編集工房ノア、1983年)。
赤字強調は引用者。

DSCN1232.JPG

◆◇◆

◆Eテレ「こころの時代」が、〈辺見庸「在る≠めぐって」〉をアンコール放送する。
@2019年7月14日(日)午前5時〜午前6時
A2019年7月20日(土)午後1時〜午後2時


やまゆり園事件から早くも3年。
小説「月」の第1回に揺りさまされてからさえ、すでに2年近く。

辺見庸「月」#1[本の旅人]17年11月号.jpg

辺見庸「月」連載第一回の扉(KADOKAWA『本の旅人』2017年11月号)


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