CANPAN ブログ検索
Loading
  • もっと見る
« 「まる子はきいきがわるい」 | Main | 美しい人と人との力 »
<< 2019年07月 >>
  1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30 31      
最新記事
カテゴリアーカイブ
月別アーカイブ
日別アーカイブ
千万匹のなかのおれひとり[2019年06月16日(Sun)]

DSCN0159.JPG
ネジバナ。別名モジズリともいうそうだ。
捻れて咲く小さな花が愛らしい。
前に土手で見たが、今回はよく行くドラッグストアのわずかばかりの草地に数本顔をのぞかせていた。

*******

◆香港のデモの圧倒的な力を見せつけられ、うらやましいと思うより、足もとの歴史を学ばないと、と思う。

1960年6月19日零時、安保条約「自然成立」の国会議事堂を包囲した33万人を数えるデモ隊の中に、次のような一人も居た。
引きつりそうな喉の奥に孤独を無理やり押し込んで、肉体と心の奥に焼けた鉄の棒を貫き立てようと欲するような。

*「自然成立」とは、同年5月19日の衆院強行採決後、参院での採決なきまま成立に至ったことを指すが、何という他人任せの、後は野となれ山となれ式の呼称であろう。
こうしたなし崩し的な用語を放置するメディアや社会の怠慢が、この国の民主主義の脆弱さということであろうか。


ある孤独  秋山清

おれが憎んでいる。
群集を。
肩を組み、プラカードをたて、わらいごえ、うたごえ、みだれる足音、夜とともにぞくぞくとやってきて。
あまりにもききなれたうたばかりだ。

旗竿のうえに夜が来て
旗竿のうえのそらに星がにぶくひかる。
旗は夜の底でくろく
夜つゆにぬれ
ぐっしょりとくたぶれて、置き去りにされ、ふみつけられ
しのびよる明けがたの充満する倦怠のなかで旗はひしゃげる。
ぐるりと見まわすあたりいちめん、デモ隊というこの、ねぼけづら、おれたち。
昨日と今日と、役目がおわって、ひき汐どきの小砂利をさらってあとずさる渚の波のように、ざわざわと音たてて逃散する。

あっという間の六月十九日、夜明け。
白っぽけた提燈デモの紙いろ。
群衆も、党も、組合も、流れ解散も、あいつらも、てめェらも。
夜つゆににれてしょぼたれた旗。
夜から朝へ、それらの過去。
しらじらしく押しながされ
議事堂をうすむらさきに未明の色がつつむ。
ひしゃげてひくくみすぼらしく見たのは
敗北をしかと見きわめぬ過剰意しきだ。

アスファルトの上の坐り場の古新聞をがっかりした腕。しなびた怒り、しずく垂れる頭髪。よじれた二本のズボン。しばたたく眼窩。ほこりがくろく詰まった鼻腔。漂白された失望。
立ちあがってゴミをはたき
早朝の街上を遁走するおれたちが
群集でもなく。
民衆すらでもなく。
 何なのだ。
 千万匹のなかのおれひとり。

               ――六月十九日 1960


*現代詩文庫『秋山清詩集』(思潮社、2001年)に拠った。


この記事のURL
http://blog.canpan.info/poepoesongs/archive/1261
トラックバック
※トラックバックの受付は終了しました
 
コメントする
コメント
検索
検索語句
最新コメント
根来珠青
銃剣道 歴史に目をふさぐおぞましさ (03/29) 当ブログ管理人
ジャーナリスト・安田純平さん解放との報【追記】 (10/26) 3億円で買える銃と弾
ジャーナリスト・安田純平さん解放との報【追記】 (10/25) マキシミリアナ・マリア・コルベ
コルベ神父のこと その2 (06/23)
若き音楽家リュカ・ドウバルグ (06/09)
タグクラウド
プロフィール

岡本清弘さんの画像
http://blog.canpan.info/poepoesongs/index1_0.rdf
http://blog.canpan.info/poepoesongs/index2_0.xml