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「万象の母」[2019年05月26日(Sun)]

DSCN0911.JPG
スイバ(スカンポ、イタドリ)の葉裏に毛虫クン。アゲハになるのだろうか?

*******

◆トランプ大統領接待のゴルフ中にアベ首相が農産物「密約」を交わしたのではないかと取り沙汰されている。根拠は今日昼過ぎのトランプ氏のツイッター。
〈Great progress being made in our Trade Negotiations with Japan. Agriculture and beef heavily in play. Much will wait until after their July elections where I anticipate big numbers!〉
(日本との貿易交渉で非常に大きな進展があった。農業と牛肉でとくに大きなね。日本の7月の選挙が終われば大きな数字が出てくる、待ってるよ!) (訳はLitera編集部による。下記の記事を参照)
★【Litera記事】
https://lite-ra.com/2019/05/post-4735.html

さもありなん。会う度に防衛装備の大量購入など気前よく国富を差し出して「朝貢外交」と揶揄されるアベ外交、一向に成長しない。
Twitterの「July elections」という複数形も衆参ダブル選挙を示唆されたのではと憶測を呼んでいる。

◆大相撲観戦のもてなし方・もてなされ方も異様ずくめ。
「米大統領杯」なるものでトランプ側は酬いたが、そのカップの面妖なことに啞然とした。
いわゆる天皇賜杯に大きさも形もソックリなのだ。
しかも今後、このカップを夏場所の優勝力士に授与するというのである。

今後5月場所千秋楽を迎えるたびに日本国民は天皇賜杯に引き続きトランプ賜杯を見せつけられ、米「支配」を再確認し続ける、というのではシャレにならない。

*******

サムライたちのブロードウェイ・パレード

◆1860(万延元)年、日米修好通商条約の批准書を交換するために派遣された遣米使節団一行のもう一つの目的は、通貨の交換比率の交渉にあったということだ。
トランプ大統領の来日がただの物見遊山でないことと事情は同じである。

米艦ポーハタン号および万一に備えて随伴した咸臨丸で太平洋を渡ったサムライたちは1860年6月、ニューヨークに到着、ブロードウェイのパレードに臨んだ。
50万人が集まったという見物人の中に詩人ウォルター・ホイットマンの姿もあった。
ニューヨーク・タイムズ紙に発表された長編の詩がある。



ブロードウェーの行列  ウォルター・ホイットマン



西方の海を越えて、こちらへ、日本から渡来した、
謙譲にして、色浅黒く、腰に両刀を手挟(たばさ)んだ使節たちは、
(あたま)あらわに、落着き払って、無蓋の四輪馬車のなかに反りかえり、
今日この日、マンハッタンの大路を乗りゆく。

「自由人」よ! 私の見るところのものを、他の人々もまた見るかどうか、
この使命の奉持者、日本の貴顕(きけん)に従う行列のなかに、
列の後ろに、また上に、周りに群がり、さては進みゆく隊伍のなかに見るかどうか、私は知らない、
だが、「自由人」よ! 私は私の見るところを君たちに歌って聞かせよう。

百万のマンハッタン人が、家のなかから街路へと飛び出すとき、
雷のはためくような砲声が、私の好きな威勢のよい唸りで、私を奮い起たせるとき、
円い砲口の巨砲が、私の好きな硝煙とその匂いのなかから、礼砲を発射するとき、
火を吐く大砲が、完全に私を不意打ちにし、空の雲がその美しい薄霞で、わが市街に天蓋(てんがい)をさしかけるとき、
壮麗な無数の直立するマスト、埠頭にある帆柱の林が、旗でいっぱいになるとき、
満艦飾を施した船ごとのマストの天辺(てっぺん)に船旗が掲げられるとき、
長旒(ながはた)がたなびき、街々の飾りの花綵(はなづな)が、家々の窓から垂らされるとき、
ブロードウェーの大路が、すべて徒歩の人々と、立ちならぶ観衆で満たされるとき、群衆の雑沓がその絶頂に達するとき、
家々の入口のあたりが人々で活気づき、幾万とも知れぬ人々の視線が、一時に釘付けられるとき、
かの島国からの賓客が進みゆくとき、行列がしずしずと前へと動きゆくとき、
呼出状が発せられ、幾千年間待たれた回答が齎(もたら)されるとき、
私もまたこれに応じ、起ち上がって街上に降りたち、群衆に交って彼らとともに眺め入るのだ。

 二

壮麗なマンハッタンよ!
わが同胞のアメリカ人よ! われわれの所へ、この時遂に東洋がやって来たのだ。

われわれの所へ、われらの都へ、
高層な大理石と鉄から成る美しい建物が両側に立ち並び、その間が通路となっているわれらの都へ、
今日この日、わが「対蹠(たいしょ)の世界の住民」がやって来たのだ。

「創造の女性」がやって来たのである、
言語の巣窟、詩歌を伝えた人々、古往(こおう)の民族、
血色鮮かに、考え深そうな、瞑想に耽り、情熱ゆたかに、
香気馥郁(こうきふくいく)、寛袍(かんぽう)ひらひらする衣裳を着なして、
陽やけの相貌、白熱せる魂と胴々たる眼光の持主、
波羅門の民族がやって来たのである。

見たまえ、私の詩題となるものを! それらのものと、さらに多くのものとが、行列のなかから私たちに向って閃(ひらめ)いてくる、
それは行列が動くがままに変化し、私たちの日前に、天来の万華鏡のように、行列の動きとともに変わりゆく。

たんに使節だけではない、また、かの島国から来た陽にやけた日本人のみではない、
インド人が立居振舞しなやかに黙々として現われる。アジア大陸そのものが、過去が、亡者が現われるのだ、
驚異と奇怪な伝説の朦朧たる夜明け、
封ぜられた魔訶不思議、古くて知るよしもない蜂窩(ほうか)の蜂ども、
北地と極暑の南国、東方のアッシリア、ヘブライ人、古代民族の最古のもの、
広大な廃墟と化した都市、移ろいゆく現世(げんせ)と、それら一切のものと、さらに多くのものが、この壮麗な行列のなかに在る。

地理も世界もそのなかにある、
汪洋(おうよう)たる太平洋と、島々の一群を成すポリネシア、その先の海岸線、
それが、これから後、君たちの臨む彼岸である――君ら「自由人」よ! 君たちの黄金の出る西の海岸から眺める彼岸である、
それぞれの住民をもつ彼方の国々が、奇しくも大挙してここへやって来たのだ、
雑沓する市場、両側にまたはその奥に偶像の立ち並ぶ寺院、仏教の僧侶、波羅門宗徒、そしてラマ僧、
支那の大官、百姓、商人、機械工、漁夫、
歌い女と踊り子、法悦の人々、蟄居の王者たち、
孔子その人をはじめ、大詩人と英雄と、勇士たちとインドの諸階級(カスト)の人々と、これらすべての者どもが、
隊伍粛々、あらゆる方角から群がり集う。アルタイ山脈から、
チベットから、まわりくねって漾々(ようよう)果てもなく流れる支那の四大河から、
南方の諸半島と準大陸の島々から、マレイシアから、
それらのものと、それらに属するすべてのものは、光り燿(かがや)いて私の目前に展開し、そして私に捉えられる、
「自由人」よ! 私がここで、彼らとそして君たちのために、歌い尽くすまで、
私もまた彼らに捉えられ、懇(ねんご)ろに彼らに引き留められる。

私もまた、声張りあげて、この行列に加わるのは、
私がその歌い手であるからだ。私は行列について声高らかに歌う、
私の西方の海上にある世界を歌う、
私は空の星のように無数な彼方の島々を歌う、
私はまるで幻のように私の前に現われた、古今無比の一新帝国を歌う、
私はわが主婦アメリカを歌い、より偉大なる至高のものを歌う、
私はそれらの島々の群れの上に、やがてうち建てられるであろう百千の栄える都市を歌う、
わが帆船と汽船とは、それらの群島の間を縫うて航行し、
わが星条旗は風にはためき、
交易は開かれ、幾世紀にわたる雌伏はその勤めを果たし、人類は潑剌(はつらつ)とふたたび誕生する、
生活と仕事は再び始まった――その目的を私は知らない――しかし、この古来のもの、アジア民族は、当然そうあるべきように更生して、
いま、世界注視のうちに、今日から発足するのである。

 三

さて、君たち、世界の「自由人」よ!
君たちは幾千年という無限の時のただなかに安坐(あんざ)しているのだ、
今日は一方から、アジアの貴顕らが君たちのところへ訪れ来たり、
明日は他の側から、イギリスの女王が、その王儲(おうちょ)を差遣わされる。

標識は逆転し、地球はとり囲まれた、
軌道は一周され、旅程は終りを告げた、
(はこ)の蓋はちょっとばかり開かれたのだが、それでも、香気は溢れるように、筥全体から匂いでる。

若き「自由人」よ! 万象の母、古くて尊いアジアに対し、
いつも渝(かわ)らず、思いやり深くいたわれよ、熱血の「自由人」よ、なぜなら、君は全的のものではないか、
君はその驕慢の頭(こうべ)を、いま彼方の群島から、その伝言を送ってきた、逢か彼方の母のために垂れるがよい。

その子供らは、そんなに永い間、そんなに永く西方へと道を踏み迷っていたのだろうか、そんなに遥かな漂泊の旅だったのだろうか、
その過去の朦朧とした歳月は、そんなに永く人間発祥の楽園から西方に向って展開していたものだろうか、
幾世紀という歳月は、その間(かん)全く人知れず、君のために、摂理のゆえに、その方面に、小止(おや)みなき徒歩(かち)の羈旅(たび)を続けていたものだろうか。

彼らは肯定され、彼らの旅程は終わった。彼らは今度は他の方面に向い、そこから、君たちのほうに向って旅するだろう、
彼らはこれからまた、君たち「自由人」のために、東に向って唯々諾々と行進するだろう。


(注)三章初節の「イギリスの女王が差遣わされる王儲」というのはヴィクトリア女王の皇太子ウェールズ公エドワードで後のエドワード七世のことである。

長沼重隆・訳『世界の詩集10 ホイットマン詩集』(角川書店、1967年)より

◆ホイットマンは日本からの使節団の姿に、西方はるか、アジアの人々と彼らが築いてきた歴史と文化の総体を見ている。中国・チベット・インド、その先のアッシリア・ヘブライ……。
アジア大陸だけではない。太平洋とその島々、ポリネシア……。山脈を越え海を渡り、時空をまたぎ越してそれらの放つ光が今ようやくここブロードウェイに到達し、なおもその先へと向かってゆくことを予感している。
ホイットマンのそうした視線を、見られる側=サムライたちが意識に上すなら、「日本的なるもの」がアジアとヘソの緒でつながっていること、血脈に溶けこんでいる「アジア的なるもの」を注意深く生かすことに豊かな可能性があることを、我々が属するこの世界が「万象の母」にほかならないことをハッキリと自覚するのではないか?


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