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石工と医師[2019年02月21日(Thu)]

石工   鈴木漠

彼は卓抜した石工(いしく)であった
終日 他人の墓石を削ってくらした
いかに尊大な人間の生涯も
彼のものさしで はかられてしまう
奥深く澄んだ彼の瞳に
人々はとうとう気がつかなかった
無口な彼が 実は
墓石の削られる音に
その人間の幸不幸を読みとるべく
耳をすませているのだと知らなかったから
あけくれは静かであった
彼は死んだ
もう誰が
彼の生涯をはかり得よう
彼の魂の上に
誰が限られた重さの石を置き得よう


*入沢康夫ほか編『詩のレッスン』(小学館、1996年)より

*******

◆精神科のお医者さんの講演を聴いた。
依存症について。
「物質使用障害」という言い方もあるそうだが、ギャンブルや、薬物、インターネットなどに身も心も奪われて生活に支障が生じ、時に身体的危険にも及ぶ。

◆依存症になる要因として幼少期に周囲の大人への信頼がうまく形成されなかったことがあるという(信頼障害仮説)。
不安や緊張を持続的に強いられて育ち、周囲の大人から心理的なサポートを受けられないまま育つと感情をうまく調節することも身につかないまま、我慢し他人を頼りにしなくなる。
「心の中」に欠けているものの代用として「心の外」にある何かを絶えず探すようになって行くというのだ。

例として最初に挙げたのは、シンナー、覚醒剤、麻薬系の鎮痛薬依存症で回復に至らず亡くなった方たち。

職業上、医師が患者の死に立ち会うのは避けられぬことではあるが、出会った人たちの生い立ちの隈々から苦悶までつぶさに接する仕事は、相手の声に注意深く耳を傾けるという意味で上の詩の「石工」に通うものがあるように感じた。

◆患者は感情を言語化する自らの力と信頼できる他者を獲得することで回復に至る。
そこに至るまでの医師の根気と注意深い観察と耳を傾ける態度に感銘を受けた。

石工もまたそのように、亡くなった人間の死=生のかたちを注意深く見つめ、石から聞こえる音に、その人の物語を聴き取ろうとしているのではないか。


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