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橋本治が聴いた石工のことば 似て非なる首相演説[2019年01月30日(Wed)]

国会は空言の場となり下がった

◆29日の参院選本会議でアベ首相は「毎月勤労統計」の長年にわたる不正な調査で国民が蒙った不利益への認識を問われて「セーフティーネットへの信頼を損なう事態を招いたことについて国民におわび申し上げる」と答弁した。
朝日新聞などの報道では、この言い回し、前日の施政方針演説とほぼ同一で、しかも29日の答弁では4人の質問に対して判で押したようにこの表現を繰り返したという。

同じ絵柄が続いても金太郎アメはなめる楽しみがあるけれど、同じ空言を弄ぶだけの二枚舌でナメられる国民の方はたまらない。

◆きのう〈Dr.ナイフ〉氏がツイッターにアップした動画は驚くべきものだ。
首相の所信表明演説から原稿を読んでいない部分だけをまとめたものである。
https://twitter.com/i/status/1089832108837617665

ひたすら「〇〇を共に××して行こうではありませんか」というフレーズを繰り返す。

〇〇は「新しい時代を」であったり「日本の明日を」や「躍動感あふれる時代を」であったりする。それを受ける述部も「進めて」であったり「作り上げて」や「切り開いて」あるいは「責任を果たして」であったりするが、その結びを「共に××して行こうではありませんか」と呼びかけるパターンをひたすら繰り返す。
このフレーズに到達した時だけ首相は顔を上げて議場の議員諸氏に視線を向けるが、それ以外は原稿に目を落とし続けている。
見ているうちに、読み上げマシーンと化した首相の周りには、作文したブレーンの姿が青白く浮かんで見えた。
戦慄する光景である。

*******

橋本治逝く

◆作家の橋本治氏が亡くなった。
内田樹との対談集に次のような橋本氏のことばがあった。

桂離宮行って、石見て驚いたもん、ほんとに。考えて石を割っているんですよ。/きれいに割るのも技だけど、変に割るのも技じゃないですか。/「ここをね、こういうふうに変に割ってくれなきゃ困るんだよな」「あたしもそう思うんですよね先生」みたいなことをね、この石を置いた人間はなんかふたりでやっていたなっていうのが見えるんですよ。それぐらい変な石がね、こう置いてあって。「うわーっ」って石見てるだけで飽きないですよ、あそこは。俺、あれにはほんとびっくりした。/石の風景じゃないんですよ。「一個の石をそこに置く」という作業でね。そんなふうにやってたんだろうなあっていうのがわかるんだけど、それがわかるからこそ、いまもその石はすごいんですよ。だからね、人間が何かやるってことは、相当すごいことなんですね。

現代の人間である橋本に、石工たちの姿が見え、彼らの会話が聞こえてくる、というのである。

◆アベ首相の演説でも作文を書いた人間の姿が見え、彼らの会話が聞こえてくる。
「ここで切り、ここで顔を上げ、議場を見回すんですよ」「同じ言い回しが続きますから、飛ばさないよう、カマないよう、あと、スピードの変化もつけてくださいよ」「〈共に〉は特に力をこめ、TVカメラは常にとらえていますから、キメ顔大事ですよ」「こうかな?」etc.
……人の作文をそうでないように読むというのも「ワザ」と言えば「ワザ」であり、首相らが「変に割る」作業に熱心なのも似てはいる。
だが官邸に巣くう彼らが「割っている」のはこの社会であり、この地球であることが決定的に異なる。
石工たちがあえて変に割った石は今もこの世界に在って語りかけてくるが、官邸の主たちが「割った」あとには、瓦礫と累々たる死屍ばかりという光景が広がっているだろう。

◆石工たちと彼らとどこがどう違うのだろう。
続く橋本治のことばに耳を傾けてみよう――

だからねえ、できてるかどうかじゃなくって、とりあえず一所懸命やろう、やるとその一所懸命やった分が、何かになって、風のような雰囲気として人に感じられるか、絵になって見えるかはわかんないけども、ともかく一所懸命やろうみたいなね、そうしない限りなんにもないんですよ。その一所懸命ってことがわからないと、いくらやってもダメ。

「橋本治と内田樹」(ちくま文庫、2011年)P.91-92。
もとの対談は2004,2005年に行われたもの。




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