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校正者の黒い鉛筆[2019年01月16日(Wed)]

◆昨日の『本を贈る』という本で「衍字」という言葉を教えてくれたのは校正家の牟田都子(さとこ)という人。

略歴をみたら、若松英輔の詩集『幸福論』の校正をしたと書いてあって、昨夏出会ったこの詩集をたちまち思い出した。

若松英輔の詩に出会ったのがまさにこの『幸福論』(亜紀書房、2018年)であった。
ブログで取り上げた折に、奥付にも名がある装丁者(名久井直子)については触れたのだが、校正者については全く知らなかった。改めて『幸福論』を取りだして読むと、詩人自身があとがきで校正者・牟田都子について書いていた。

校正は、牟田都子さんが今回も担当してくれている。校正は言葉に磨きをかけ、コトバの余韻を生み出す仕事だが、読者がもし、ここでそれをお感じ下さったなら、そこに校正者の存在を想い出していただければと思う。

◆「今回も」とは、若松の第一詩集『見えない涙』も牟田が校正したことを感謝と信頼の念とともに記しているわけだ。


◆牟田は我々がイメージしているのとは違い、赤鉛筆ではなく黒の鉛筆で校正する、という。その理由を次のように書いている。

なぜ赤鉛筆ではなく鉛筆を使うのかというと、あとで消すことができるからです。
たしかに校正とは、本になる前のゲラ(本になったときと同じ体裁で出力される試し刷り。校正刷りとも)を読んで間違い(誤植)を探す仕事です。ですがひとくちに間違いといってもさまざまな「間違い」があります。
わかりやすい「間違い」の例としては誤字脱字や衍字(えんじ)、ことばの誤用、固有名詞や数字の誤りなどがあります。さらに文章の中に矛盾がないか、意味の通じにくいところはないか、読む人を傷つけたり誤解を招くおそれのある表現はないか――あたかも、手のひらにのせたリンゴに傷はないか、色つやはどうか、形は整っているか、香りは、糖度は、とためつすがめつするように、いくつもの角度からゲラを読みます。
ただ、「これは誤植かな」「ここはこうしたほうがいいんじゃないかな」と思うことがあっても、いきなり赤鉛筆でゲラに書き込むことはしません。疑問や提案はすべて鉛筆で書き込みます。鉛筆は消しゴムで消すことができます。それは編集者と著者が検討して、不要と思えば消してもらってかまわないということなのです。

*牟田都子「縁の下で」;『本を贈る』(三輪舎、2018年)より

◆自分を押し出すこと、プレゼン力を発揮することが小学生にも求められる時代に、その逆を行くような、一歩も二歩も引いて出しゃばらずという流儀だが、校正者として提案を書く場合もあるというのは、校正が著者や編集者と対話をして行くことでもあるからだろう。
対話によって私たちは、深いところに思考の錘を降ろし、遥かな地点まで歩を進めていることがしばしばある。

*******

心耳(しんじ)と心眼    若松英輔
   
大切に思う人が
語り得ないという
沈黙の声を
聞き洩(も)らさないために

心に眼を開け
世の人が
書き得ないというおもいを
文字の深みに
感じとるために

心に 秘密の小部屋を用意せよ
傷ついた者をかくまい
自らが 人生の危機にあるとき
安息のひとときを
持つために

   *詩集『幸福論』より(亜紀書房、2018年)
*******

【関連記事】
若松英輔「夏の花」[2018年8月6日]
http://blog.canpan.info/poepoesongs/archive/947

>聖堂[2018年8月9日]
http://blog.canpan.info/poepoesongs/archive/950

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