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闇を曳航する船の上の我ら[2018年11月27日(Tue)]

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アカトンボ

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◆TVの「お宝鑑定」で井上有一の書が出ていた。依頼人が井上の発注した筆を届けに行って書いて貰ったものだという。小ぶりな書ながら、「上」という一字が、土筆のように屈託なく空を志向していた。

井上有一の書を表紙に選んだ辺見庸『月』について、もうすこし――

◆「さとくん」がネット通販で「鎌」四本やハンマーを調達する一方で、ナイジェリアの栄養失調の子ウマラの登場する公共CMを見て「ユニセフ・マンスリーサポート・プログラム」に参加すべくクリックする。
そのチグハグさ。
さとくんの中には憎しみや意地悪さ、邪悪なものがない。

かれの脳裡の海と空は、こういってよければ、あっけにとられるほど”まっとう”なのだった。ただ、さとくんの想念には、かさねられた何枚かのセロファン紙のように、おぼろに屈折した、いくつかの光と影がうきしずみしていた。みえかくれする影は、どうやら小船であった。一艘の黒い木造船が煙霧にかすんでういているらしい。それは象の鼻のような舳先のあたりはまあまあはっきりみえるのだけれど、艫(とも)のところが、闇と霧とに煮とろけて、どんよりと形をくずしているのだった。船尾のみえない船は、半身のない魚のように、なにかうけいれがたいものだ。ひとだってそうだ。夜の海原をすすむとき、じぶんの船首から、じぶんの船尾はみえない。そして面舵(おもかじ)をとるにせよ取り舵にせよ、艫というのは、どこか怪しい。きまって闇に融けているから。ヘッドライトは波間をどんよりと鉛の谷のように照らす。けっきょく、探照灯をつけた艫のない船は、闇の先頭にあって、闇のぜんたいをするすると曳航しているのだった。

「船尾のみえない船は、半身のない魚のように、なにかうけいれがたいものだ。」――なんという表現だろう!
「うけいれがたい」とは、倫理に拠らず、論理に委ねることも肯んじない、むしろ生理のことばだ。
そうして、この、船尾が闇と霧にとろけたまま夜の海原を進む船に我々自身が乗っていることを否(いや)も応もなく納得させてしまうことばだ。
そうして、我らが托生しているこの船は、「闇のぜんたいをずるずると曳航している」!!

◆「托生」と書いたものの、闇の中が見通せない以上、実は「托死」ではないのか。そう思って次の段へと読み進めると、案の定だ――

闇の正体は、光線のかげんで、おりかさなりあって相当の厚みさえおびた、おびただしいカゲロウの死体にもみえた。それは巨大な氷山のようになってゆっくりと夜をただよっていた。そのものには、この世のだれもが例外なく、眠ったふりや死んだふりや気づかぬふりをしてくわわっていた。岬の回転灯台の光が、漂流物をつかのま照らす。そのかたまりの一角に、なにかとてつもなくじゅうだいなものがさらされたようにおもったしゅんかんに、光線と漂流物ははなればなれになった。

◆続く朝、「次元A」 「次元B」の接続部から湧き出てくるカゲロウたちの姿こそは、何度か繰り返される凶事への道行きの中でも、目を奪われずにはいない高潮と氾濫の表現である(p.213から214にかけての8行)。

*以下にそれを写そうとしたが、ここまでに挟んだ感想が余計なお節介であることに気づき、引用を中止する。願わくは原著の2427(p.195~222)までを、予断を排して通読せられんことを。



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