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パペットのような「さとくん」[2018年11月22日(Thu)]

◆昨日、11月21日の11時ころ、当市の防災無線からいきなりJアラートの試験放送が流された。
「これは、Jアラートのテストです」を繰り返した。
アナウンスの声も、警戒音を意味するらしいノイズのような信号音も音質が非常に悪い。

今年、すでに記憶にあるだけでも2回目。
「馴れさせる」ためなら、回数が多いのは逆効果であり、子どもたちの不安と恐怖をあおるだけだ。授業中の学校などは迷惑このうえない。

市井の人々の暮らしは「パッペット・ショー」(桐生悠々「関東防空大演習を嗤(わら)う」1931年)ではない。わたしたちは国家の操り人形ではない。

*******

辺見庸『月』にもJアラートが登場する。
「赤いおんな」に人形みたいに首根っこをつかまれた「さとくん」が、窓の外に何が見えるか、答えさせられる場面――

さとくんがふたたびまばたきする。自発的にまばたきしてみる。積極的に。小窓からまた、そとをながめる。答える。答えさせられる。「海……あっ、みえますね、やっぱりみえます……」でしょう? それならさいしょからすなおにそういえばいいのよ。沖の色は? 水平線はみえてる?波は? 波の色は? おんなの声が波になってつぎつぎにかぶさってくる。黄色い海が視界いっぱいにひろがっている。まぶしい。うねっている。津波だろうか。遠くでサイレンが鳴っている。音がうずまいている。あれはきっと「国民保護サイレン」だ。国民保護サイレンがだんだんちかづいてくる。何匹か犬も吠えている。肝がふるえる。なんだか悲しい。Jアラートがなにかをくりかえしつたえている。しかし声は切実ではない。ちかごろはなにをいっても切実には聞こえない。

(略)
市民巡回員や駐輪場の老人たちがハナミズキのしたを、けんめいにほふく前進している。オシッコ一回分らくらく吸収の尿もれパッドが股からずれている。なんにんかは海にあおむいてうかんでいる。黄色い海で溺れている。そうやってえへえへとわらっている。
 (p.74〜75)

◆Jアラートに反応して待避行動をしている人間たちの向こうには津波の犠牲者が浮かんでいる。
ファルス(道化芝居)と悲劇が区別なく目の前に広がっている。


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