「空虚な建設」や「卑小な希望」ばかり[2018年10月28日(Sun)]
◇ホオジロ。雀の大きさほどだが、群れないのが好もしいし、さえずりもまた悪くない……
……
◆ところが田村驤黷ノとっては、鳥たちはことごとく次のようなものとして存在するらしい。
〈言葉のない世界〉より 田村 驤
5
鳥の目は邪悪そのもの
彼は観察し批評しない
鳥の舌は邪悪そのもの
彼は嚥下し批評しない
*詩集〈言葉のない世界〉より
◆幾千言費やしたものであれ、寸鉄刺すようなものであれ、ことばで批評してくるものは何者でもない。しかし鳥はそんなものをぶつけては来ない。
ただひたすら世界とそこにさまよう自分を観察し、己が喰らうべきものを喰らって呑み下すだけだ。まるでこちらを相手にしている風ではない。
彼に見下ろされるようにして落下し漂流する自分が行くのは〈空虚な建設も卑小な希望もない道〉〈破壊と繁殖〉〈再創造と断片〉の針の道だ(「8」の第2連)。
◆この詩もテーマは「死」とそれに抗う自分であって、冥府の門番のような鳥に見下ろされている人間が、「建設」だ、「希望」だ、「創造」だ、と景気のいい言葉を連ねたところで、どれもたちまち氷結して粉々に砕け散る、ということを詩人は良く知っている。