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藤田嗣治晩年の信仰[2018年10月17日(Wed)]

レオ・フジタとしての晩年

◆戦時中の藤田嗣治は次のように自分の半生を振りかえっていた。

私は二十五まで東京で暮らした。それから二十年パリで暮らした。私の体は日本で成長し、私の絵はフランスで成長した。私には日本に係累があり、フランスに友達がある。今や、私は日本とフランスを故郷に持つ国際人になってしまった。私には二ケ国ながらなつかしいふるさとだ。
私は、フランスに、どこまでも日本人として完成すべく努力したい。私は、世界に日本人として生きたいと願う、それはまた、世界人として日本に生きることにもなるだろうと思う。
 

 『アトリエ漫語』より「私」(新井紀一・編『彩管余録』教材社、1937年)

世界大戦がなければ日本と欧米を自由に往き来して、上の言葉を過不足なく実現する生涯を送ったかも知れない。
しかし、戦後の藤田嗣治は画家の戦争責任を一身に引き受けるかたちになった。
身の置き所に窮したのだろう、再びフランスへ。二度と日本に足を向けることはなかった。

◆1949年、フランス入国の許可が下りるのを待ってニューヨークに滞在中、油彩「カフェ」を完成させ、個展も開いたが、国吉康雄ベン・シャーンらの抗議を受けたという。

アメリカで制作を続けた国吉が敵性外国人の立場に置かれて味わった圧迫と創作の自由を求める奮闘からすれば、戦時中の藤田が葛藤なきままナショナリズムに傾斜したことは容認しがたいものだったろう。
★2016年7月16日記事【国吉康雄の絵】⇒http://blog.canpan.info/poepoesongs/archive/325

◆翌1950年2月、パリに着き、55年にはフランス国籍を取得(のち日本国籍は抹消)、1968年に亡くなるまで日本に戻ることはなかった。

1959年にランスの大聖堂で君代夫人とともに受洗。レオナール・フジタと改名。
レオナルド・ダ・ヴィンチへの畏敬をこめた改名であったことは良く知られている。

パリ郊外のヴィリエ・ル・バクルで夫人と二人きりの隠遁生活、人間嫌いの度を深めていったとされるが、晩年に綴っていた文章の中に、次のようなことばが残されている――

日本に生まれて祖国に愛されず、
又フランスに帰化してもフランス人としても待遇も受けず、

(…略…)
迷路の中に一生を終る薄命画家だった。
お寺を作るのは私の命の生根の試しをやって見るつもりだ。
4月18日


 *「夢の中に生きる」より、1966年の一文。

◆「お寺を作る」云々というのは、ランスノートルダム・ド・ラ・ペ(平和の聖母)礼拝堂を建設する話が持ち上がり、それを引き受けたことを指す。一人二人と静かな祈りを捧げるのがふさわしいような小堂の内部を飾るフレスコ画を1966年、80才を目前にしたフジタは3ヶ月で一気に完成させた。

◆今回の藤田嗣治展で初めて宗教画の数々に触れることができた。
3~40代にも宗教画は描いているが、晩年の作品群は身近に置いた十字架からカンヴァスや羊皮紙に描いたものに至るまで丹念に描き込まれた細部が見飽きない。

藤田嗣治教会のマケット1953年_0003-A.jpg
〈教会のマケット(模型)〉(1953年)

縦・横・奥行きとも30〜40cmほどのミニチュアの教会。小さなマリア像の後方のステンドグラスも丁寧に作り込まれており、極小の堂内を彩り豊かに照らしていた。



藤田嗣治マドンナ1963年_0002-A.jpg
〈マドンナ〉(1963年)
聖母マリアも天使もアフリカンの顔立ちで描いてある。
聖母のモデルは映画「黒いオルフェ」のマルペッサ・ドーンであるという。(ランス市立美術館蔵)


藤田嗣治礼拝1962-63_0001-A.jpg
〈礼拝〉(1962-63年)
聖母をはさんで修道士姿のフジタと修道女姿の君代夫人を描いている。
フジタの背後、丘の上の白い家は彼らが暮らしたヴィリエル=ル=バクルの家。
この絵もここのアトリエで制作され、1964年、生涯最後の個展に出品された。(パリ市立近代美術館蔵)


*******

*作品の画像および説明はいずれも「没後50年 藤田嗣治展」図録によった。
*藤田の文章は近藤史人・編の講談社文芸文庫「腕(ブラ)一本/巴里の横顔」収載のもの。藤田の生涯については近藤史人氏による解説及び同氏編の年譜によった。



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