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フィリピン日系人リーガルサポートセンター

NPO法人フィリピン日系人リーガルサポートセンター(通称PNLSC)は、フィリピン日系人、とりわけ太平洋戦争とそれに続く混乱により日本人父と死別または離別し、現地に残された二世(残留日本人2世)の法的・社会的支援を目的に発足したNPO(特定非営利活動法人)です。

〒160-0004 新宿区四谷1-21戸田ビル4F
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リパダス(ハゴタン) [2007年10月16日(火)]
 Mさんのお宅の隣には、Mさんの娘さんのご家族が築40年という年代を感じさせない頑丈な木材を使ったシンプルな家に住んでいた。そこで少し休憩したあと、じゃ実際にまずはハゴタンを拝見させてもらおう、ということで外に出た。ハゴタンは、その家のすぐ裏手にあった。


<ハゴタン(現在も使用中)>

 ハゴタンとは、マニラ麻を精製するための鉄製の道具で、戦前のダバオ日本人移民のアバカ加工風景によく出てくる。現在、身近なところでは、カリナンにある、日本フィリピン歴史資料館に今は使われていない当時のハゴタンがそのまま展示されていて、気軽に観ることができる。

 しかし、今回観るハゴタンは、現在も使用されているものである。

 これまで出会ったダバオ在住のどのフィリピン人に尋ねても、現在も動いているハゴタンなど存在しない、と言われていたのだが、今回、Mさんの家族がそれを所持していた。

 30年ほど前に、シリブという、戦前アバカ栽培で盛んだったリパダスから少し離れた村に使われなくなったハゴタンがあり、それを当時、900ペソで購入しリパダスのMさん家族の住んでいるところに運んできたという。

 関心のない人にとっては、単なる古臭い鉄製のマニラ麻加工機であるが、私としては、まさか未だにハゴタンが普通の山村に存在し、しかも未だに動き、使用されている、という事実をこの目で確かめることが出来たのは、感激であった。

 ハゴタンを実際に動かしているMさんの娘婿が、ハゴタンの背に貼り付けてあったブリキの板を指し「なんて書いてあるの?」と私に尋ねた。

 そこには、「水野式ハゴタン」と明確な日本語が刻まれていた。このハゴタンの製造元らしき住所と製作元名もそのブリキの板には刻まれていた。住所は「日本名古屋市」とあった。このハゴタンは、戦前日本の名古屋で製造され、そしてはるばるミンダナオ島までやってきたのであろうか。そして戦後は、板に書かれていた日本語が読めない人々によって用い続けられた。歴史的資料ではなく、Mさん家族の生活必需品として存在しているこのハゴタンのたくましさを痛感した。ここまで長きにわたり使い続けられている道具をみると、それそのものは無機物であり、また私自身のものではないのだが、固有名を与えたくなるほど愛着を感じる。

 加工するアバカは手元になかったが、私に気を使って少しだけ動かしてくれた。

 しっかり動いた。自動車マニアが自慢のエンジンをふかすとき、「ブーン」という私のような自動車に興味のない人にとっては単なる騒音でしかありえない音に酔いしれる気持ちが少しわかる気がした。エンジンの回転音と、ハゴタンが動くことによって鉄がすれる音を聴きながら、一瞬だが、当時の日本人移民時代に実際に触れた感覚を覚えた。

「これ(未だに動くハゴタン)こそが、日本人の宝だ」と、大声で言いたかったが、誤解を招く可能性があるかと思い、遠慮した。

 ハゴタンは、ニッパ椰子の葉でできた屋根に覆われ、大事にされていた。

 ついでにMさんの娘婿は、その屋根に釣り下がっている、フットボールを半分に切った程度の大きさの釣鐘を指し、

 「これは、戦中に誰かが置いていった、ミサイルの先だよ」と教えてくれた。


<元ミサイル、今釣鐘>

 そばにあったトンカチでそれをたたくと、「カーン」という良い響きがした。この音で当時の戦争の様子を思い浮かべることはなかったが、かつての大量殺人兵器の先っぽが、いい音色を放つ釣鐘となっている、というギャップになんともいえない面白みを感じた。このような面白みは、なかなか日本では味わうことが出来ない。

 生きたハゴタンに出会った感動をシェアできる人が、余り私の周囲にいなさそうなのが残念なのだが、それはそれで仕方ない。いずれにせよ、日本人移民について考えを一歩深めるよい出会いとなった。

         PNLSC事務局(S.S 在ダバオ)
Posted by pnlsc at 00:58 | 事務局便り | この記事のURL | コメント(7)
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コメント
http://www.toyota.co.jp/Museum/data/a03_14_2.html

なんとなくこの水野式3輪自動車
が妖しそうです。

http://www.mizuno-iw.co.jp/
でしょうか?

名古屋の企業です。
Posted by:さとう  at 2007年11月22日(木) 02:35
さとう様

ハゴタンについて大変面白いコメント、ありがとうございます。

私がダバオで見たハゴタンは、製造元が名古屋とあったのですが、当時は日本でもハゴタン製造が盛んだったのでしょうか。
Posted by:PNLSC事務局(S.S 在東京)  at 2007年11月14日(水) 09:32
Maquinado del tuxe en maquina llamada HAGOTAN, la fibra obtenida se clasifica segun su
color y finura, al salir de la maquina.

Machining of tuxe in machine called HAGOTAN, fiber obtained is classified according to its
Color and finesse, out of the machine.


http://biblioteca.espe.edu.ec/upload/Memorias_Tecnicas.pdf
より

ちなみにabaca=「Abacá」=アバカもスペイン語なのかもしれません。

http://en.wikipedia.org/wiki/Abac%C3%A1
Posted by:さとう  at 2007年11月11日(日) 01:01
さとう様

ご指摘ありがとうございます。
確かにこんな身近なところにあったのですね。勉強不足でした。

ちなみに、「ハゴタン」という言葉の語源は、スペイン語だという話を聞いたことがあるのですが、明確ではありません。その点も調べてみたいと思っています。
Posted by:PNLSC事務局  at 2007年11月07日(水) 09:35
灯台下暗し

http://www.tkfd.or.jp/publication/reserch/2005-6.pdf
より。

この時期、窮地を救ったのは麻挽機械の発明であった。それまでは手挽きにより繊維抽出
方法がとられていたがこれは「労のみ多くして非能率」であった。太田興業の技術者4人が
麻挽機械の発明に没頭し、さらに改良が重ねられ、1921 年、動力式麻挽機械「ハゴダン」が
開発された。
ハゴダンはダバオの麻産業に革命的発展をもたらした。生産能率は手挽きの 12 倍となり、
自営者 1 人あたりの耕地面積拡大につながった。日本人会は 1925 年、太田興業1社ほか6個
人を発明の功労者として盛大に表彰している。
このハゴダンをめぐっては特許権紛争も起きている。日本人の発明である動力ハゴダンに
対し、サンボアンガ在住のある米国人が米国特許庁局にこの特許を出願して専売権を獲得し、
その特許をフィリピンの商工局に届け出たことが発端である。米国人がハゴダンの制作販売
に従事していた日本人に権利金の支払いを要求し、日本人がこれを拒否したことから訴訟に
発展した。裁判には8年の歳月と多額の費用を要したが、日本人会が団結して事に当たった
結果、最終的には日本人側の主張が容れられ、原告敗訴となった。

参照文献
蒲原廣二『ダバオ邦人開拓史』日比新聞社
Posted by:さとう  at 2007年11月02日(金) 17:30
さとう様

ハゴタンの特許争いは、有名ですね。機会があれば、その歴史についてもいろいろ調べてみたいところです。
Posted by:PNLSC事務局(S.S 在東京)  at 2007年11月01日(木) 09:55
ハゴタンといえば、当時の記録に
アメリカ人と日本人が特許について争ったとの記録があります。
10年以上の裁判をへて日本が勝訴したのだそうですが、こんな逸話もあるそうです。(出展は忘れました)

その他は

http://www.k0001.jp/sonsi/vol05a/chap02/sec05/cont00/docu160.htm


http://ko-it.cocolog-nifty.com/natural_fiber/2005/04/post_2.html
Posted by:さとう  at 2007年10月20日(土) 08:10