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平和構築におけるコミュニティ・メディアの役割 Vol.1 [2011年04月22日(Fri)]
笹川平和財団 「平和構築:草の根の視点から」
平和構築におけるコミュニティ・メディアの役割

はじめに
 紛争はメディア(主流、オルタナティブを問わず)にとって、大事なニュースである。
主流の報道機関は、記事やテレビ、ラジオで紛争を取り上げる。コミュニティ・メディア(ラジオや新聞、インターネットなど)は、もっと地域に近い視点で報道し、現場からの情報を提供する。視点が異なっていたとしても、メディアが多くの国において国内外の読者・視聴者に対して情報を提供する主要な機関となっていることを忘れてはならない。したがって、このインタビューで紹介するように、ジャーナリストの役割は、世論を形成し政策決定に影響を与えるという点で重要なのである。信頼でき、正確かつ客観的な情報によってメディアは紛争を助長することも減らすこともできる。このレポートでは、タイ南部における紛争で、平和構築に貢献したいという目的を果たすためにコミュニティ・メディア組織がどうやって紛争を取材・報道しているか、という点に焦点をあてたい。「深南部」と呼ばれることも多いタイ南部は、マレーシア国境付近のパッタニー県とヤラー県、ナラーティワートの3県、およびソンクラー県の4郡である。この地域は独自の文化を持ち、住民の多くはマレー系である。
 この文章では、二つの例を通じてメディアが平和構築において果たす役割を示してみたい。取り上げるのは、インターネット・メディアの「ディープ・サウス・ウォッチ」、ラジオ番組を制作する女性の市民社会組織「犠牲者家族たちの友」である。二つとも、タイ南部の中心都市パッタニ―にある代表的大学、プリンス・オブ・ソンクラー大学との共同事業である。
ムハンマッド=アユブ・パタン氏は、2006年にスタートした「ディープ・サウス・ウォッチ」の編集長。
ソラヤ・ジャムジュリーさんは、パッターニー県での紛争によって被害を受けた地元女性と一緒にラジオ番組を制作している。番組名は「深南部の女性の声」

ディープ・サウス・ウォッチ Deep South Watch.
www.deepsouthwatch.org
プリンス・オブ・ソンクラー大学パッタニー校
タイ南部における平和構築―市民メディアの役割
ソラヤ・ジャムジュリー Soraya Jamjuree
プリンス・オブ・ソンクラー大学 公開・継続教育・広報・宣伝部代表

ムハンマッド=アユブ・パッターン氏(編集長)へのインタビュー
Q:「ディープ・サウス・ウォッチ」の編集長として、平和構築とは何だとお考えですか。ムハンマッド(以下、M):私たちのメディア組織は、タイ南部の紛争に焦点を当て地域の住民と協力しているので、オルタナティブ・メディアと分類されるべきかもしれません。紛争に対しては中立的な関わりをし、反乱軍とタイ軍どちらの暴力行為に対しても明確に反対しています。編集者として言いたいのは、私たちのオンライン・サイトの主要な目的は対話のための活気ある場を提供することにある、ということです。対話は、暴力行使の対極にあるものです。対話の場を広げることは、人びとに重要なシグナルを送ります。そのシグナルとは、平和という同じ目的を達成したい時でも、殺しあうのではなく話し合いによってそれが実現できることを知るということです。
 私の組織の強みは、紛争地域にあるので、自分たちが目撃した暴力をレポートできるということです。衝突があると現場の人たちがそこに出向き記録することで、暴力を監視することもできます。私たちのメディアには、研究者たちとの共同作業によって調査に基づいた専門性が付け加わるという重要な特徴もあります。本を出版することで、私たちの得た知識を活用しています。このような方法によって、人びとのほんとうの声と渇望、平和像を、外部の人たちに伝えているのです。これが、ディープ・サウス・ウォッチが平和構築に果たす役割です。
私たちのプロジェクトは重層的です。インタビューを行ない、紛争についての多様な考えを地域の人たちに知ってもらうための草の根セミナーを開きます。研究者と一緒に調査を行ない、紛争に関するデータベースを作成します。データとして、殺りくと暴力に関する情報とさまざまな和平の提案に対する人びとの反応が集められています。国際機関や中央政府の政策立案者が現場レベルでの紛争を理解するために、私たちのデータを使います。データベースと調査は、研究者と共にセミナーを開くためにも使われます。このセミナーでは、普通の人たちが知識を使って自分の平和をつくることをお手伝いします。今では、このセミナーが人びとの対話を進める場となり、信頼をつくる重要な機会となっています。Q:ディープ・サウス・ウォッチは、どうやって平和構築を達成していますか?
M:私はウェブサイトを人びとのメディアとして始めました。ウェブサイトは暴力を止めるためのコミュニティの考えを反映したものでなければならず、地域の人びとにとって魅力あるものでなければならない、ということです。自分たちで平和をつくるのは地域の人たちなのですから。これを正しく行なうために、人びとに必要なのはいろいろな問題に関する信頼できる情報です。こうした知識を獲得することによって、人びとはコミュニティに根差した強固で効果的な提案を作りあげることができるのです。
 そのために私たちのウェブサイトは研究者と密接につながっています。研究者は自分たちで調査を進め、政府の政策を分析する人たちです。ウェブサイトで、その調査を公開します。草の根セミナーで調査についての議論を深めます。こうしたプロセスによって人びとは重要な洞察力と知識を得ていくのです。
Q:あなたたちの情報にする人びとの反応は?
M:タイ南部では人口の80%がイスラム教徒、残りは仏教徒です。タイ語が高揚のため、マレー語は家庭か私立学校でしか話されません。普通の人たちが暴力のない社会で生きられない限り、平和構築は実現しません。お互いが話しあう安全な場所を創りだした時にのみ、それが実現できるのです。私たちの努力(論文もセミナーも)は、暴力を使わずにこれを実現するためのより深い知識を与えてきました。一例として、タイ南部の自治という問題を挙げてみましょう。数年間まで、公の場で自治について話すことはタブーでした。分離主義と暴力に結びついていたからです。しかし、民族集団間の信頼を構築するためには、この状況は変わらねばならないと考えました。そこで、ディープ・サウス・ウォッチは、地方分権に関する議論を始め、このテーマに関する公の論議の場を作り出しました。ディープ・サウス・ウォッチは、自治という問題に関する多様な意見を伝える独自のレポートと分析を出版し始めました。その中には、タイ南部における地方分権は分離主義につながるものではないというメッセージを示す新たな地方分権のモデルも含まれていました。こうして地域住民の中に、それまでタブーだった自治というテーマについて議論し、民族集団間の協力に向かう考えに結びつけるための場ができたのです。昨年(2009年)は40回ほどこうした場を持ちました。研究者や一般の人たち、軍関係者、仏教の専門家と僧侶などが参加しました。そこでの議論は怒りや暴力を生みださず、非常に実り多いものでした。専門家との密接な共同作業があったからこそ、この成果があがったという点が重要です。

(翻訳:越田清和)
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