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理事からのメッセージ(20) [2008年02月04日(Mon)]
「礼儀・マナーの躾をするのは家庭か学校か」

通信教育大手の株式会社ユーキャンが、20代〜60代の男女に「小学校で行われている通常の授業以外にどのような授業が必要だと思うか」をアンケート調査したところ、最も多かったのが71.6パーセントで「礼儀・マナー」。次いで多かったのは64.4パーセントの「道徳・倫理(命の大切さ)」、以下48.8パーセントの「自然体験」、38.0パーセントの「ボランティア」、37.6パーセントの「高齢者との交流」と続き、勉強に関わる回答は32.2パーセントの「外国語(英会話等)」でかろうじて6番目に入っているそうです。

このアンケート調査から、子どもの社会性や人間性、人間関係力等に関わる力の弱体化に、多くの人が危機感を抱いているということがわかります。学級崩壊、いじめや不登校、引きこもり、さらには非行や少年犯罪などといった子どもの現状を見れば、こうした結果になるのも当然かもしれません。しかし、本来「礼儀・マナー」から「高齢者との交流」までのトップ5の回答は、家庭教育で躾け、体験させるべき基礎課題です。それを学校教育に求めるのは無理難題を押し付けるようなものではないでしょうか。

現在学校には、安全教育、IT教育、環境教育、性教育等など、かつてはなかった数多くの事柄が求められるようになっています。その上に、それらの授業を追加しろといわれても、まず不可能です。結果的に、当たり障りのない表面をなぞる程度のことしかできないに違いありません。小学校に期待できるのはせいぜい家庭教育で躾けられたそれらのフォローアップ、ブラッシュアップを行う程度なのです。にもかかわらず、小学校の授業としてそれらを実施すべきとする人が多いというのは、おそらくたくさんの人が、“もう家庭教育には何ら期待できない”と考えているからでしょう。

やはり、家庭で教育し、躾けるべきことは家庭で行う。この当然のことを、当然のこととして親が勇気と固い決意をもって取り組むことがまず求められます。

そもそも基本的事柄は皆共通しているにしても、「礼儀・マナー」にはある程度地域色、家庭の伝統というものもあります。必ずしも学校が全国一律で教育ができるものではありません。「道徳・倫理」とは、まさしく価値観そのものです。それを教師にすべて委ねることは、親としての存在価値をみずから放棄するようなものでしょう。“人生、いかに生きるべきか”“人間はどうあるべきか”等、そこにこそ親が自分自身の生き様を通じて伝えるべき欠くべからざるものがあります。さらに「自然体験」も「ボランティア」や「高齢者との交流」も、すべて親が、日々の暮らしの中でごく日常的に与えることができる体験のはずです。それらを学校の授業にしてしまっては、かえって不自然なものとなり、奉仕の精神を損ない、敬老の念を失うことになりかねないでしょう。

もちろん小学校に期待すべきことは期待し、委ねるべきは委ねるべきです。しかし、何より親として、お互い家庭で担うべきことはきっちりと担うようにすることが大切です。言うまでもなく、そこには完璧も正解もありません。自信がなくて結構です。恐る恐るで十分です。まず、親であるみずからの足元から始めることが重要なのです。
(副理事長 大江 弘)
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