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2017年07月20日

90号

『物語りとしての心理療法−ナラティヴ・セラピィの魅力』
 著 者: ジョン・マクレオッド
 監訳者:下山晴彦
 発 行:誠信書房、2007年(原著:Narrative and psychotherapy,1997)

紹介者から
 前号で紹介したとおり「この病気にかかってどのくらいですか」と聞くのと「この病気にかかったと<思ってから>どれくらいですか」と聞くのでは、回答の意味が異なります。

 前者は、医者の診断を受けて病名がついてからの期間が答えられるでしょうし、後者はその方の具合が悪くなってからの時間が返答されるでしょう。

「実は、一年くらい前から具合が悪くて、家族のすすめで半年前に病院に行ったところ、・・・(病名)といわれました」

 このような文脈の場合では、病名がついたのは半年前でも一年前からその方の具合が悪かったことがわかります。物語論は、後者の主観的な語りを事実として受け止める立場です。

 私たちは、この視点に立つことで、例えば「(一年も前から)さぞ、お辛かったでしょうね」と語りかけることができるようになります。語りのなかに、その方の真実があると受け止める姿勢がうまれてくるのです。

監訳者から
 心理療法が正式な社会的活動の一種とみなされるようになったのは、歴史的にはごく最近のことです。では、それ以前の昔の人たちは戦争など(災害や疫病、飢饉)で負った心の傷をどのように癒やしていたのでしょうか。

 著者のマクレオッド教授は、心理療法の起源について二つの見方を示しています。

 一つは科学の発展による起源で、もう一つは、文化的伝統に遡る見方です。
後者の見方では、集団や個人の間でおこる緊張や怒り、喪失の感情、目的や意味への問いといった問題に対する固有の対処法をあらゆる文化は備えていると考えます。地域の共同体のなかで親しく語り合うことを通して、人びとを癒やしてきたと考えるのです。
 
 起源を遡ると、心理療法は科学の発展だけではなく、地域共同体のなかで普通の人びとの物語りが変容してきた一面があるのです。

 それが近代社会の発展にともなって、科学的な体制を整えたことで、社会の重要な構成要素になってきたと理解できます。本書は、社会との関連で変化・発達しつつある心理療法のあり方を物語り(ナラティヴ)論の観点から見事に分析しています。

著者(ジョン・マクレオッド)より
 本書は、心理療法におけるストーリーの役割と意義について検討するものです。私は、心理療法をナラティヴのプロセスとして理解することが理にかなっていることに気づきました。自らの行動をストーリーとして語り、その内容を編集して、書き換えるというナラティヴのプロセスとして理解するようになったのです。
posted by oyagaku at 00:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 図書紹介